327話・今は亡き変態じいさん
嗚呼、思い出したぁっ!
そうそうあの変態じいさん、確かそんな二つ名を名乗っていたよっ!
僕はガッコのオッサンの事を思い浮かべ、恍惚な表情で悶えていた
あの変態じいさんの事を思い出し、全身に寒気がゾゾッと走る。
「オレはその首斬りファングから逃れる為、獣人のプライドを吐き捨てて
あいつに見つからない様に隠れ生きているのさ!クソッ!」
獣人として戦闘から逃げ出すのが余程悔しいのか、サァジュが怒りと困惑の
混じった表情を浮かべながらテーブルをガンッと叩き、その無念を表す。
「でもその苦労も今日までですね。だってファングさん、もうこの世には
いませんし!」
「な!?ファングのじいさんがこの世にいない...だとっ!?」
自分の無念の元であるファングの死を、飄々とした口調であっさり告げる
ルビに、サァジュが目を大きく見開いて喫驚している。
「そ、それって一体どうい―――ハッ!?ま、まさかお前!ファングの
じいさんを殺っちまったのかっ!?」
「いいえ、ファングさんを倒したのは私じゃありませんよ。ファングさんを
倒したのは...こちらのシュン様です!」
追い詰める様に問うてくるサァジュに、ルビが首を左右に小さく振って
右手を蒼井の方にバッと差し向ける。
そしてこの者こそ、至極脅威な首斬りファングを倒した強き者だと
サァジュに告げると、まるで自分の事の様にドヤ顔を決めて、鼻息を
荒く鳴らした。
「はぁぁ!?このガキんちょがあの首斬りファングを倒したっていうのかっ!?」
ルビから聞かされる衝撃な事実に、サァジュの目を見開き、口はアングリと
開いて、ビックリ仰天してしまう。
「しかも殆ど無傷で、圧倒的にですよ♪」
「ハァァァ!?ファングのじいさんを倒せただけでも信じられんというのに、
無傷の圧倒で倒したっていうのか!?」
ルビから聞かされる更なる情報に、サァジュがまぶたが千切れそうなくらいに
目を見開いて喫驚してしまう。
「な、なるほど...。そ、それがお前がさっきから言っている、オレが知らない方が
いいって情報なんだな?た、確かに、それは知らなくて良かった情―――」
「いいえ。私の述べた、知らなくていいって情報はこれではありませんよ?
ハッキリ言いましてその情報は、こんな事とは比べものにならないくらいの
衝撃で驚愕レベルですから♪」
「な、なんだと...!?く、首斬りファングを倒したという事実よりも、
その聞かない方がいいって情報は上だと言うのかっ!?」
ルビが先程から述べる、聞かない方がいいという情報......これがファングを
倒した事より更に上だという事に、サァジュが一体どんな事だったんだと、
今までで一番の喫驚でその身を固めてしまう。




