324話・ココを掴まえる訳
「さて...残りはお前だけだな、隊長さん!」
僕はニッと口角を上げて、残った隊長の前にゆっくり近づいて行く。
「あぐぐ...うぐぐ......」
「あ、そうだ。鎖のせいでしゃべれないんだった。ナヒ悪いけど、こいつの
首の部分の鎖を解除してくれないか?」
『え...どうしてですか?こいつ、ココちゃんの拉致を指揮した隊長ですよ?
じわじわ締めあげて、死ぬ程の後悔をさせちゃうべきなのでは?』
「今はまだしない。こいつにはちょっと聞きたい事があるんでね。だから
解除をお願いしてもいいかな?」
『チッ...そういう理由なら、まぁしょうがありませんね。それっ!』
ナヒが蒼井の頼みを渋々と聞き入れ、隊長の首を締め上げている鎖をほどく。
「ゲホゲホ...ハァハァ......」
「...というわけなんで隊長さん。早速質問なんだけど、ココを掴まえた後、
一体ココをどうする予定だったのか......それを聞いてもいいかな?」
「ぐ、ぐぬぬ...お、おのれ!この平民風情が、エリートの俺にこんな仕打ちを
しやが―――――ハギャッ!!?」
「僕が聞きたいのは、そんな事じゃないんだけど!」
反省の色を全く見せない隊長の頭上へ、オーラを乗せた重い拳を思いっきり
叩き込み、呆れ口調で軽く隊長を窘める。
「僕が聞きたいのは、ココを掴まえてどうする気だったんだって事だけだ!
今度ふざけた言葉を吐いたら、あれの仲間にするぞ!」
僕は近衛兵隊長の顎を掴んで、親指をクイッと周囲の地面に向けて差す。
「はひぃぃぃ!わ、わかった、わかったから!言うから!首を飛ばすのだけは
勘弁してくれぇぇぇぇっ!」
蒼井が親指を差した場所、そこには無惨な姿で転がる自分の部下だったモノ...
それが目の中に映り、次は我が身と怯えてしまった隊長は、その頑な口を
簡単に開いてしまう。
「じ、実はこの町の領主様であるグリーン貴族のズズーン様が、ゴットンの町で
行う遊戯...その遊戯の駒として使う為に、獣人族や亜人族のガキを集めて
いらっしゃるのだ!」
「遊戯...それに駒...だと?一体なんなんだ、それは!?」
「ひぃぃぃぃいっ!?い、言います!言いますから、そんな顔をしないでぇぇぇっ!」
蒼井がジロッと睨みつけると隊長は目を見開いて動揺し、その身をブルブルと
震わせながら、蒼井の聞きたい事を教えようとする。
「グ、グリーン貴族達のアジトとも言えるゴットンの町は知っているだろう?
その町に各地からグリーン貴族が集まり、数ヵ月に一回、そこで賭け遊戯が
行われるんだ」
「数ヵ月に一回の賭け遊戯...」
「ああ。その遊戯は金にものを言わせて奴隷にしたり、どこかで強引に掴まえた
様々な亜人族のガキ共を自分の駒として使用し、相手が死ぬまで戦い競わせると
される賭け遊戯の事さ...」
「な!?」
ゴットンの町で行われるという、グリーン貴族による賭け遊戯の内容を
聞いた僕は、そのあまりにも身勝手な振る舞いに、吐き気と激昂が入り混じった
感情になってしまうのだった。




