321話・ウソみたいな理由
「あ、あ~の...そこの兵士さん、ちょいとお聞きしたいのですが、
うちのココをお捜しのご様子ですが、一体何用でしょうか?」
僕は頭をポリポリと掻きながら、ココを捜しているという近衛兵、
その隊長と思われし者に近づいていき、何故ココを捜しているのを訪ねる。
「なんだ、貴様は?あの獣人娘の飼い主か?」
申し訳なさそうな表情で近づいてきた蒼井を、ジロッと近衛兵の隊長が
睨みつけてそう述べてくる。
「飼い主というか、あのココとは主人と従人の関係...こういった立場です」
ジロッと睨む目線をやめない近衛兵の隊長に、僕はココとの関係を伝える。
「だったら、あの獣人娘の飼い主じゃないか!言い直すんじゃねぇよ平民!
うっとしいっ!」
「兵士様のご機嫌を損ねたのなら謝罪いたします、すいませんでした!」
僕の答えが気にくわなかったのか、近衛兵が顔を真っ赤にして激昂するので、
取り敢えず頭を垂れ謝罪しておく。
「それで、先程の質問なのですが...うちのココにどの様なご用事で?」
「やかましいぞ、平民!貴様は黙って、俺達の前にあの獣娘を差し出せば
いいのだ!」
蒼井が一々口ごたえしてくるので、近衛兵の苛立ちがドンドン貯まっていく。
「ハァ...そう言われましても理由を聞かねば、私もはいそうですかと
お渡すわけにもいきませんので...是非、その理由をお聞かせ下さい!」
「チッ...面倒くさい奴だな。おい、こいつにその獣人娘を捉える理由を
教えてやれ!」
ココを捉える理由をしつこく聞いてくる蒼井に、近衛兵の隊長が根負けし、
後ろにいた部下のひとりに、ココを掴まえる理由を説明させる。
「ハッ!いいかよく聞けよ、平民!その獣娘はな......」
近衛兵が何故ココを掴まえようとしているのか、蒼井にその理由を詳しく
説明していく。
「...というわけだ!わかったか、その獣娘を掴まえる理由が!罪がっ!」
「なるほど...つまり、その加害者の傭兵に正当防衛を行った被害者のココを、
そのクソみたいな理不尽理由で掴まえようと...こういうわけですか?」
近衛兵から聞いたココを掴まえる理由が、思っていた想像よりも上を行く
クソな事に、僕は心底から呆れ返ってしまい、最早嘆息も出てこなかった。
「貴様!俺の説明を全く理解していないじゃないか!そいつが手を出した
相手はあのグリーン貴族の傭兵なんだぞ!」
「だから、何?そいつがグリーン貴族の傭兵だからって、何で加害者と
被害者の立場が逆転するんだ?お前ら...頭、大丈夫か?」
僕はこのクソ兵士達に、最早敬語を使うのも億劫となり、ゴミを見る様な
目線でジロッと睨むと、人差し指を頭の上に持っていき、その指を
クルクルと回して見せる。




