32話・今頃、気づくクラスメイト達
「ギフトを受け取らなかった勇者の行方...ですか...?」
「はい...」
「愛野さん、どうして質問を?」
「みんな、気づいていないの...?蒼井君がここにいない事に!」
「え...蒼井君がいないだって...?あっ!ほ、本当だ!どこにもいない...!?」
光牙院が愛野に言われてその事に気づき、周りを穴が空くほど見渡したが、
蒼井の姿はどこになかった。
「どういう事だよ?あいつ、確かに召喚寸前まで俺達の側にいたぜ!」
奥村も同じく周りをキョロキョロと見渡したが、やはり蒼井の姿はどこにも
見つからなかった。
「お、おい...今の聞いたか...!」
「嗚呼、聞いた...。何で蒼井の奴、ここにいないんだ?」
「あいつ結構、地味だったから、存在に気づかなかったって事なのか?」
「それあるかも!」
「くううっ!瞬君がいない事に気づかなかったなんてぇ...オイラ、
心の友失格だよ~っ!」
愛野、光牙院、奥村の慌てている姿や言葉を目や耳にしたクラスメイト達が、
やっと、蒼井がいない事に気づき、ガヤガヤと騒ぎ始める。
「ねぇ...愛野さん。愛野さんがさっきクリス王女様に言ってた質問、
あ、あれって...蒼井君の事なの?」
井上の言葉に愛野は静かに首を縦に振る。それを見たクラスメイト達が
喫驚し、更にガヤガヤと騒ぎ出す。
「そ、そんな...何でそんな馬鹿な真似をしたんだ!」
「そうだよ!せっかく普通の人からクラスチェンジの出来るチャンス
だというのに!」
「ここにくれば、地位も名誉もあるって、あいつ聞いてなかったのか?」
「そ、そうだね...もしかしたら蒼井君...光牙院君と女神様の話を聞いて
いなかったのかも...?」
「イヤ...それはないと思うぞ。あの会話はここにいるクラスメイト全部が
聞いてたはずさ!なあ...そうだろ?聞いてないって奴は手を上げてくれ!」
「......」
「......」
「......」
「ほら見ろ、手を上げないって事はクラス全員があの会話を聞いていたって
事だ!」
「でも、蒼井君だけが聞いてない可能性もあるよ?」
「う、た、確かに...」
正論を投げかけられた奥村が、頬に汗を流し言葉を詰まらせる。
「クリス王女様。さっきの質問の答え...聞いてもいいですか?」
「......愛野様。その質問の答え、それは少々酷な事を言う事となって
しまいますが...それでもよろしいですか?」
「こ、酷な事......?」
「はい」
「か、構いません!どうか教えて下さい、クリス王女様!」
「......わかりました」
愛野の見せる真剣な表情を見たクリス王女は、意を決して愛野の質問の
答えを言う為、口を開く。
「愛野様の質問、女神様からギフトを受け取らなかったという勇者様が
いたと言う事実は書物や歴史でも見た事も聞いた事もありませんし、
噂などでも聞き覚えにありません。がしかし、受け取らなかった結末が
どのような結果を迎えるのかは、何となくですが想像につきます。
お気の毒なのですが、愛野様。私の想像ではその御方はこの地のどこかで
お亡くなりになられてしまう可能性、それが大きいと思われます......」
クリス王女は愛野の質問に対しての答えを、偽りなく伝えていく。
しかし、
「な、何故ですか!いくらギフトを持っていないからって、書物や歴史で
載ってや聞いた事がないからといって、何で蒼井君が死んじゃうという
結末になっちゃうんですか!」
クリス王女の述べる答えの内容に、納得を見せない愛野は反論する。
「それはですね、愛野様。ギフトには恩恵以外にも、ある隠された
特殊能力があるからなんですよ...」
「か、隠せれた特殊能力......?」
そんな愛野の反論にクリス王女が、ギフトには隠された特殊能力なるモノが
ある事を、深刻な面持ちで伝えてくる。




