3話・白いデルタゾーン
「うおおおぉぉっ。!スゲエ、スゲエッ!な、何だこれぇえ!身体の底から
物凄い力をビンビンと感じるぜぇえっ!!」
先程、女神様の元へ神託の儀を受けに行った奥村君が、興奮しながらこちらへ
帰って来た。
「おお!あの奥村があんなテンションなら、私も安心してギフトを授かりに
行けるわねぇ!」
「嗚呼!ズルいぞ井上!今度は俺が行く番だぞっ!」
「そんなの誰が決めたのよ!このエロ本マニアがっ!」
「な、何だと、このBL大好きオタクがぁあっ!」
「「ぐぬぬぬ......!!」」
「ハイハイ~ケンカをするなら~ここは~私が先に失礼しますね~♪」
「「嗚呼!緑川!抜け駆けはズルいぞぉぉ―――!」」
目からバチバチと火花を散らして睨み合っている二人の隙をついて、
緑川が神託の儀の部屋へと駆け足で向かって行く。
イヤ...どっちにしたって、全員が神託の儀を受けるんだから、先も後も
ないだろうに。
何だかんだとリア充している、あの幼馴染トリオに僕は心の中で
「リア充爆ぜろやぁぁあっ!!」
...っと、思わず口から出てしまいそうな声で叫喚する。
「あれ、蒼井君?どうしたのそんな所に座って?も、もしかして具合でも
悪いの?」
「え...?あ、愛野さん!ううん、違うよ。ちょっと休憩してただけだよ」
「そ、そっか、それなら良かった♪」
突然、僕に心配そうな声で言葉を掛けてきたのは、クラスメイトの男子に
一番人気の愛野優希さんだ。
イヤ...正確には、学校一と言っても過言じゃないかも。
何せ、愛野さんへ告白する為、下駄箱にラブレター、廊下でデートの交渉、
休み時間や放課後に呼び出しての告白合戦...等々。
毎日、毎日、様々な方法で愛野さんに交際を申し込んでくる男子達が後を
絶たなかったのだから。
ちなみに愛野さんへ告白した全ての男子達は、愛野さんから「ごめんなさい!」を
告げられたって言うのは、まあ語るまでもないか。
「私もズット立っていて疲れたから、ちょっと休憩しようかな......」
愛野さんが足を擦りそう言うと、僕の前にちょこんとしゃがんでくる。
「―――ハッ!?」
な、なな、なぁぁああ――――っ!!?
あ、あ、愛野さんがしゃがんだ事で、僕の目の前に神秘なる白いデルタゾーンが
見えてるぅぅぅぅうう――――――っ!!?
これは見ちゃいけないっ!
見ちゃいけな......
見ちゃ......
目を反らさなきゃと思いつつも、その神秘の白い三角形の誘惑に負けた
僕の視線が、至福を得る為に白い三角形をロックオンし続ける。
「あ、蒼井君!?そ、その...そんなに見つめられると.....、な、何か照れて
しまうんだけど......」
キャアアァァァア―――――――ッ!!
愛野さんに目線が行っていたのが、バレてるぅぅぅぅう――――――っ!?
「ゴ、ゴメンね、愛野さん!が、学校一可愛いと謡われる愛野さんが目の前に
いるかと思うと、ついつい見つめてしまっちゃったよ!あは、あははは♪」
「うひゃ!?か、か、可愛い!!?」
僕の言葉を聞いた愛野さんが、顔を真っ赤に染める。
ふう、咄嗟に出た言い訳だったけど、誤魔化せたかな?
「そっか...私を可愛いって思っているんだ.......」
蒼井がパンツを見ていた事がバレていないかとドキドキしていた頃、
愛野が蒼井に聞こえないくらいの、かぼそい声で何かを呟いた。
ん、どうしたんだろう、愛野さん?
僕の言い訳を聞いて、愛野さんの表情が少し曇った?
ま、まさか!?
愛野さんのパンツをガン見していたのがやっぱりバレてしまったのかっ!?
「と、ところで愛野さんは、今の状況をどう思う?」
僕はパンツのガン見がバレていないかどうかを、愛野さんと会話をしながら
確認してみる。
「私...?私は...そうだね、帰りたいって言うのが本音だけど、女神様の話じゃ、
それも叶わないみたいだし...悲しいけど、現実を受け入れる事にしたわ!」
「そっか...愛野さんはスゴいね。こんな状況なのに、現実を見て前に突き進もうと
しているんだ...」
「うん...だって、こんな訳のわからない所で死んでいくのは嫌だし...だったらさ、
この世界で生きていく為にも、ギフトだっけ?あの力を授からなきゃ!」
並々ならぬ決意を見せる愛野さんの姿を見て、僕は相好を崩す笑顔を見せる。
そして愛野さんにパンツを見ていた事がバレていないと確信し、心から安堵で
ホッと胸を撫で下ろす。
「じゃ、私...友達に用があるから、ここで失礼するね♪」
愛野さんがニコッと微笑んで僕に手を振ると、その場を去っていった。
「意気込んでいる愛野さんの姿、ホント可愛かったなぁ......」
あんな娘だから、授かるギフトの能力も物凄いんだろうな。
それでもって、アーチって世界でも色々と大活躍をしちゃうんだろうね。
そして僕は...きっと...だから......
「すいません女神様、僕はギフトなんて要りませんっ!」
そう女神様に告げるのだった。