29話・夫婦喧嘩
「じゃあ、次は俺の質問な!」
「どうせ、達也の質問はHな事なんでしょう?」
「んな訳あるか!お前の質問よりましな事だ!何だよ、質問の内容が、
王子様いますかって...バッカじゃないの!」
「い、いいじゃん!絵本とかで、王子様に憧れてんだし...」
「ほう...お前が王子様に憧れ...ねぇ」
磯下が疑い全開のジト目で、井上を見ている。
「な、何よ...達也...。その疑わしいモノを見る目は...」
「イヤね...俺はてっきり、兄と弟の王子...どっちが攻めで、
どっちが受けなんだろうとか、想像してるモンだと思ったからよ...」
「え...?」
図星をつかれた井上の動きが一瞬止まる。
「その顔...想像してやがったな...」
「い、いいじゃん!想像くらい!あんたと違って、誰にも迷惑なんて
かけてないんだから!」
「ハアン!俺が誰に迷惑なんてかけたってんだ!」
「かけてるじゃない!主に私にさ!」
「は...?俺がお前に迷惑をかけてるって、何の迷惑をだよ!」
「かけてるじゃん!朝は私が起こさないと起きないし、おこずかいも
管理しないとすぐ使っちゃうし、昼食も私が作ってあげないと菓子パン
ばかり食べちゃうし...それから...」
井上の説教......妻の不満は止む事なく、まだクドクドと続く...。
「さて...あの夫婦は~ほっといて~次は私が質問しますねぇ~!
あ、私の名前は~緑川奈々っていいます~よろしくです~!」
取り敢えず、この二人は放って置かれ、次のクリス王女への質問が
再開される。
「緑川奈々様ですね...では、質問をどうぞ...緑川様」
「私の質問は~寝食をする場所ってどこなのかな~って?」
「寝食を...ですか?それなら、この城に皆様のお部屋が用意されて
いますので、そこで寝食をお願いしようと思っています...」
「うあ~なんて~ロマンあふれる~事なんでしょう~お城暮らしだ
なんて~!」
「おい...聞いたか、俺達...お城で暮らすんだとよ!」
「おお!お城の食事って、どんな感じなんだろう?」
「そりゃ~決まってるだろう!きっと、今まで俺達が見た事もない
料理ばかりが出てくるんだよ!」
「私は食事より、お部屋の方が気になりますね!」
「私も私も!一体、どんな部屋が待ってるんだろう!今から、
ワクワクしてきます!」
「ええ、本当ですよ!恐らく、私達の家の部屋より広い部屋
なんだろうね!」
「それに部屋の内装も、超金持ちが泊まる様なホテル並みだよ!」
緑川の質問の答えを聞いていたクラスメイト達が、お城の生活は
どんなものなんだろうと、色々と想像を膨らませて、喜色満面で
はしゃいでいる。




