289話・報告を信じない
「へぇ...これがザッカの冒険者ギルドなんだ......」
見た感じはカトンのギルドと、そう変わりはないみたいだけど?
ん...?ギルドの出入り付近に見えるのは、冒険者達かな?
あのパーティの装備品、結構豪華だな...一体いくらぐらいするん
だろう?
あの可愛い二人さん。誰かとパーティを組む為に待っているのかな?
「こら、シュン!そんな所で、なにボーッとしているの......よっ!」
「はうっ!?」
僕がギルド周辺を観察していると、いきなりアミューが僕の背中を
バンッと強く叩いてくる!
「さぁ!今夜の宿代の為に、ちゃっちゃと盗賊の財宝を換金しに
中に入るわよ!」
そして腕をギュッと掴み、その勢いで蒼井をギルドへと引っ張って行く。
「ようそこ!我がザッカ支部の冒険者ギルドへっ!」
ギルドへ入るや否や、出入りで作業をしていた受付嬢が僕達を
見つけると、元気な声で挨拶をしてくる。
「って、おや?見た所...あなた方、このギルドの顔馴染みじゃない
冒険者みたいですが...このギルドには、一体何用で?」
受付嬢がそう述べると、蔑視と嫌悪感の入り混じった表情で、僕達を
値踏みする様にジロジロと見つめてくる。
「じ、実は僕達、ちょっとした用事で旅をしている者でして、このギルドには
資金を得る為の換金と、ご報告したい事がありまして寄らせていただきました!」
そんな表情に少し尻込みして戸惑う僕だったが、何とか冷静さを崩さず、
ここへ来た理由を受付嬢に述べる。
「ほうほう...換金とご報告ですか?取り敢えず最初に、ご報告とやらを伺っても
宜しいでしょうか?」
「ん?別にいいですよ。えっと、ご報告というのはですね......」
受付嬢の問いに対し、僕が快く返事を返すと、伝えたい報告内容を
詳しく受付嬢へ説明する。
「えええええぇっ!!?ろ、六角の荒野に屯っていた『六角』を退治した
ですってぇぇっ!?」
僕が告げた報告を聞いた受付嬢が、叫声を上げてビックリしている。
「お、おい。聞いたか?あの凶悪な集団六角をあいつらが撃退したん
だとよ!」
「イヤイヤ、それはないだろ。どう見ても、あの凶悪な六角を撃退できる
パーティメンバーじゃないぞ!」
「そ、そうだよな。あんなガキ共が、盗賊六角を退治できるわけねぇよな!」
こ、こいつら、何を言っているんだ?
退治していないのなら、一々報告になんてくるわけないじゃん。
大体そんな嘘をついて、僕達に何のうまみがあるって言うんだ?
僕達の言っている事を全く信用しない回りの冒険者達を見て、
僕はこんな思考でこいつら大丈夫なのかと、少し不安になってしまう。
「ハァ......自分達を強く見せたいのはわかりますけど、虚言はお姉さん、
あんまり感心しませんよ!」
...って、あんたもかいぃぃぃっ!
蒼井の報告内容を、回りの冒険者達と同様に受付嬢も全く信じず、深い嘆息を
こぼしながら、蒼井をジロッと睨んで注意を促してくる。
「もういいです...貴女では埒が空かないので、ギルマスを呼んでもらえますで
しょうか?」
聞く耳を持たない受付嬢に苛立ち口調のルビが、ギルドマスターを呼んでくれと
お願いする。




