281話・意外な決着
「こいつ...一体どんな攻撃をしてくるんだ...!」
僕は武器と盾をメイーナ・ブレードとメイーナ・シールドに切り替え、
黒騎士との間を取りつつ、神経を集中する。
「あ...そんなに恐縮している所、本当に悪いんだけどさ。ボクはキミと
闘うつもりなんて全然ないからね♪」
「え!?」
先頭体制でいる僕に、見た目と違い過ぎる軽い言葉で、戦闘はしないと
語ってくる黒騎士に、僕の思考はかなり戸惑って動揺してしまう。
「もう...何をやっているんだ、キミは!確かキミには偵察だけを頼んだと
思うんだけど......それが何故こんな事になっているんだい?」
そんな蒼井の動揺を尻目に、黒騎士が横にいる天使に対し、やれやれと
言わんばかりに首を左右に小さく振って、呆れ顔をする。
「あはは...だ、だってさぁ~あんなに強い人物が目の前にいるんだよ!
どれだけの強さなのか、闘ってみたくなるじゃないですかぁ~♪」
「普通はそんな考えには到りません!」
苦笑しながら自分の行為を誤魔化してくる天使に、黒騎士がそれを即答で
否定する。
「ハァ...まぁいいでしょう。さ...とにかく帰りますよ、テラ。早く戻って、
止まっている作業の続きをしなきゃいけませんからね。そうしないと......」
「あ...」
黒騎士の言いたげな何かに、テラと呼ばれた天使がふと気づくと、慌てて
持っていた武器を特殊空間へと仕舞う。
「コホン...では、謝罪とお詫びの念が堪えませんですが、簡潔させながら
ここで失礼させてもらいますね♪」
「バイバイ~♪」
黒騎士が軽く会釈をして天使が手を大振りに振ると、その場を颯爽と
去って行くのだった。
「......な、なんだったんだ、あれ?」
『さぁ...しかし、これだけはわかります。闘わずに済んで良かったっと』
「だね。もし闘っていたら、アミュー達を守れていたかどうか、わかん
なかっただろうしね...」
飛んで行く黒騎士と天使二人の方向を見ながら、ナヒと僕はひとまずの
安堵感を得る。
「そんじゃ、僕達もアミュー達の所に戻ろうか♪」
ナヒにそう述べると、僕はアミュー達のいる場所へ降り立った。
◇◇◇◇◇◇
「ねぇねぇ、主様。あの白銀野郎、放って置いて良かったんですかぁ?
あの白銀野郎の鎧に刻まれていた赤い紋章...あれって、メイーナ様から
直の恩恵を受けているって証拠ですよぉ~?」
「だからだよ。あのメイーナって女神は、あのジジイも厄介がっている人物
だからねぇ。そんな輩の逆鱗を無闇につついたりはしないよ!」
テラの愚痴りながらの疑問に対し、黒騎士が神妙な面持ちでその理由を答える。
「でも主様なら、何とかいけるんじゃないんですか?」
「そうだね...確かに敗けはしないと思うけど、その時に乞う被害が尋常では
済まないと思う。恐らく、ボクでも五体満足でいられるかどうか、正直自信が
ない...」
「ふへぇえ!?あ、主様が五体満足では済まない!?」
「なので、ここはなるべくかかわらない...それが一番だよ♪」
納得がいかないとごねるアルテミに、黒騎士がそれを行った時、自分が
どうなってしまうか、シミュレートした結果をテラに淡々と説明する。
それしにてもあのジジイめ。
今回の『物語』に、一体どれだけのフラグをぶっ込むつもりでいるんだ?
「ん...?主様、今なにか言いましたか?」
「ああ。少々独り事を呟いただけさ。それよりテラ、このままじゃアルテミが
怒りそうだから、飛ぶスピードをもうちょっと上げるよ♪」
「ち、ちょっと待って下さいよぉぉ~主様ぁ~っ!わたし、さっきの戦闘で
MPが殆どないんですよおぉぉぉ~~!」
テラの必死の叫声虚しく、黒騎士はそれを無視して、飛ぶスピードを上げて
先に行くのだった。




