280話・黒騎士の脅威
「なんだ、あいつの格好...漆黒の仮面に漆黒の鎧...だと?」
突如、目の前に現れた漆黒の仮面と漆黒の鎧を纏った相手に、僕は
目線をジィィーッと向ける。
『あ、あれはマズイ...マズイですよ、主様!?予想外と言う言葉を
大幅に越えていますっ!!』
「え...そんなに?僕には、ちょっと痛々しいナルシスト黒騎士さんにしか
見えないんだけど?」
さっきより更に怯えが増すナヒとは対象に、僕には黒一色で装備を揃えて
イキッているだけの痛々しい人物にしか見えなかった。
『ハァ...そうでしたね。主様はまだ気配察魔法を覚えていなかったんで
したね?だったら、これを見て下さい!』
『ステータス・オープンッ!』
ラ??・マ???
LV1
職業???
力1
防1
速1
魔1
幸1
「なんじゃ、こりゃ?名前が殆どハテナだし、ステータスがオール1だとっ!?」
ナヒの認識魔法にて相手のステータスが表示されるものの、その殆どの文字が
文字化けしており、更に数値は全部1と表示されていた。
『これは間違いなく、認識阻害魔法の類いですね......』
「認識阻害魔法...?ああ確か、磯下君達にかかっていたステータスの正しい
数値を偽装したり、気配を隠したりとかができる上位魔法だっけ?」
ナヒの述べる認識阻害魔法という言葉を聞き、うろ覚えの記憶を辿って、
それを思い出す。
『しかもこのステータスを見るに、これは阻害ではなく認識魔法を完全に
無効化していますね...。オール1表示はその結果でしょう...』
「確かにうわっとはなるけどさ。でもこれがそんなにも焦る事なのか?
ただステータスがチェックできないってだけだろう?」
『何を言っているんですか、主様は!隠蔽ならともかく、私の認識魔法が
ここまで完璧に無効化されてしまっているんですよっ!』
「だからそれがそんなにも驚く事なの?認識魔法が通じない相手がいた、
ただそれだけの事じゃないのか?」
ナヒが、かなりの驚きと困惑を見せ戸惑っているが、僕はそこまで共感は
できずにそれを不思議がっていると...
『ハァ!何を言っているんですか、主様は!私は女神であるメイーナ様の
データを元に作られているんですよ!その私の認識魔法なんですよっ!
それを阻害できるって事はこの黒騎士も勇者様と一緒で規格外LVって事で
しょうがっ!』
ナヒの戸惑いを全く理解していない蒼井に、ナヒが目の色を変えて、
こと細かく今の状況を真剣になって説明する。
「そ、そっか!メイーナをベースにしたお前の認識魔法が効かないって事は、
こいつも勇者同様、神クラスの何かが関わっているかもって事かぁっ!?」
『どうやら、わかってくれた様ですね。あの黒騎士から感じる強大なオーラと
私の鑑識の阻害...これを総合するに、弱かったから助かった勇者様達と違って、
今の主様達の状況はかなりヤバい状況の中にいます。それをその身に体感して、
油断無きよう、しっかりと気を引き締めて下さい!』
「りょ、了解!神経を研ぎ澄ませ、油断も隙を見せないよう、ガッチリと
心がけていきますっ!」
今更ながらやっと危機感を感じた僕は、あの黒騎士の強さが勇者以上の
神LVの力を持っている可能性があるとわかり、真面目モードに切り替えて
神経を集中し剣と盾を構える。