275話・天使の切り札
「はは...勝手に勝った気なられるのは困るんだけど......」
「な!?」
撃ち込んだマグナムの魔力弾を確実に食らった筈の天使が、余裕な
表情を見せて目の前に立っていた。
「しかしわたしとした事が迂闊だったよ...まさか、あなたが主様の
言っていた、巨大な力の正体だったとはねぇ~♪」
そして天使が、マグナムの魔力弾によって巻き上がっている煙幕を気合いを
入れて全て吹き飛ばすと、微笑みを浮かべてこっちを見てくる。
「おいおい、今の攻撃で無傷なのか......?」
『そ、そんな事はありません...。恐らく、あれはギフト技『超回復』の
恩恵だと思います!』
ギフト技...超回復?
「ち、超がつくって事は、かなりの回復技って事だよね?」
『はい...天使の固定ギフト技のひとつで、死んでさえいなければ、
受けたダメージを魔力が続く限り、瞬時にHPを全回復させていくという
面倒なギフト技です!』
ええぇぇぇぇっ!?
HPを全回復ですとぉぉぉぉぉぉっ!?
「そ、それじゃ何か、キッチリとどめをささなきゃ、減らしたHPが
元の数値に戻っちゃうって事!?」
『そう言う事ですね...。MPの続く限り、HPが回復し続けます...。
更に厄介なのは、天使のMPって、少なく見積もっても5000近く
あるんですよねぇ...』
「ご、5000!?そ、そんなにあるの...!?」
そ、それじゃ、ほぼチート状態じゃん...あの天使さん......。
『これは参りました。今の攻撃であいつを倒せなかったのは、正直かなりの
痛手です...』
「め、珍しいな...ナヒがそんな弱音を吐くだなんて!?」
困惑と戸惑いを見せて狼狽えているナヒに、ちょっと...いやかなりビックリして
しまい、僕はナヒと同じく、困惑と戸惑いの表情を見せてしまう。
『そりゃ、弱音も吐きたくもなりますよ!何故なら......』
「ここまで強いなら『あれ』を使用してもいいかも♪主様にはこの技は使うなと
釘を刺されましたが...この場を逃げるにしても、このままでは逃げ出すのも
困難そうだしねぇ...♪」
ナヒと蒼井が戸惑いを見せる最中、天使が何かの切り札を使う決心を
していた。
『ハッ!?あ、あいつから出るこの気質...!?やはり、間違いありません!
あの天使のやつ、『キルティング・モード』を使おうとしていますねっ!』
「え!な、何それ!?」
なんか、めちゃくちゃ物騒な名前なんだけど!?
遥か昔、全ての人類から恐れられていたと思われる、天使の最強ギフト技...
キルティングモードを確認すると、ナヒの口調は驚愕を隠しきれないでいた。
「ねぇ、ナヒ。そ、そのキルティング・モードって......何?」
なんか物騒この上ない名前だし、もう悪い予感しかしないんですけど!
『キルティング・モード...簡素で言うのなら、天使のバトルモードですよ。
あれを発動すると、天使のステータスが数十倍にアップします!』
「なう!?数十倍にアップするっ!?ただでさえ、魔族より数十倍の強さだって
いうのに、それを更に越えてくるの!?」
ひええぇ!やはり、悪い予感的中だったぁぁっ!?
「元々天使達というのは、魔王や魔族を討伐する為に創造神が英雄の専用防衛と
して作ったとされる戦闘マシーンですからね。魔族如きの力では、敵わずに
圧倒されても当然の結果ですよっ!」
ナヒが神妙な面持ちで、天使が何故強いのかを、淡々と詳しく教えてくれる。




