254話・羨ましい蒼井
「そうそう、カフェって言ったら~エルフだけで経営しているカフェが
あってさ~達也はそこに入り浸りなのよね~♪」
「なっ!?何でお前がそれを知っているんだっ!?」
磯下は誰にも見つからない様に、こっそり忍んで通っていた筈なのに、
何故バレたんだと、顔中に大量の冷や汗を掻いている。
「エルフのカフェ!?そ、そこはボインさんがいっぱいのカフェなのかい、
磯下君!?」
「ふ......」
緑川にバレていて動揺を見せるものの、蒼井の問いに、当然だと言わん
ばかりの静かなサムズアップで答える。
「マ、マジか!?」
く、くそ...ランスロッドがそんな桃源郷だったとは...不覚だ!
やはり僕も一緒に召喚されておくべきだった!
僕は無念とばかりに地面に両膝と両手を突いて、頭を思いっきり下げて
項垂れる。
「ちょっと...シュン様。エルフはここにもいるんですけど...私じゃ...
駄目...なんですか?」
蒼井の二の腕にギュウッと抱きついたルビが、ウルウルな瞳をして、
そう訴えてくる。
「はひぃぃぃ!?そ、そんな事はないです!?エルフはルビさんだけが
いれば、充分に事足りていますから!」
更に上目遣いで僕をジィィーッと見てくるルビさんを見て、心臓ドキドキな僕は、
もうエルフカフェなんてどうでもいいと思ってしまう。
「本当ですか!嬉しいです、シュン様♪」
おお、おおお!腕に...腕に至極究極な感触がぁぁぁぁっ!!?
感極まったルビさんが、更に僕の二の腕に胸をグイグイと押し付けてくるので、
僕は二の腕に全神経を集中させて、その感触を楽しむのだった。
「ゴフォン!ルビさん...いい加減、シュンから離れてくれませんかね?」
「もう!アミューさんのいけずぅ!」
イチャイチャしている蒼井とルビに、アミューが強い咳払いをして
そのイチャイチャをとめると、二人の事を強引に引き剥がす。
「はは...な、何か思いっきり話題がずれてしまったみたいだね...」
「ったく...達也の余計なひと言のせいだからね~!」
緑川がプンプンと磯下へ膨れっ面で激おこしている。
「じゃさ、こういうのはどうだろ、蒼井!このまま別れるのは寂しいからよ、
この途中にザッカって町があったじゃん、その町まで一緒に冒険して、
それから解散って言うのはどうだ?」
「う~ん、そう...だね。僕達もその町には寄る予定だったし、アミュー達が
それでいいなら、僕は構わないよ!」
「私もそれで別に構わないわよ。私はシュンの行く所について行くだけさから♪」
「私もアミューさんと同じく、シュン様の行く場所が私のいる場所です!」
「ボクもそうだよ、だってボクお兄ちゃんは主従関係なんだから!」
アミュー、ルビ、ココの三人は、笑顔で迷わず蒼井の言葉に賛同するのだった。




