242話・磯下の舌打ち
「ウ、ウソだろ...あ、あのルビお姉さんのダイナマイトなボディにも
ギュッとされた...だとっ!?う、羨ましぃぃぃいぃぃぃっ!!」
タユンと揺れるルビの胸に磯下の目線が動くと、あまりの羨ましさから、
地面を拳で何度も叩いて、無念の念を吐いている。
「おい、達也...本当、いい加減にしないと、め・ぐ・み・に言うわよ~!」
「だぁあ、いいじゃねえか!羨むくらいさぁぁっ!だってよぉ......チッ」
「ちょっと~達也くぅぅん~?今~どこを見て舌打ちしたの~かしら?
ねぇ~どこを見てぇぇぇぇ~!!」
「うげげぇうぇ...ま、待てって、その首の締め方はやっちゃ駄目なやつぅぅっ!
しし、死んじゃう、それ、マジで死んじゃう締め方だからぁぁぁぁっ!!?」
舌打ちを受けた事があまりにも気にくわなかったのか、緑川が磯下の
首根っこを思いっきり握って、ギュッと締めつけてくる。
「おお!磯っち、念願が叶って良かったたい♪女の子からギュッて、して
ほしかったチャロ?」
ニシシと笑うマーガレットに、「これは俺の求めたギュッとは全然違う!」と、
磯下が出ない声をあげて、必死に否定してくるのであった。
それからしばらく、磯下君と緑川さんの夫婦漫才が続く事、数十分。
何とかご機嫌を取り戻した緑川さんを確認すると、僕達は改めて、アミューと
リリちゃんが待っている砦の地下へと移動する。
コツン...コツン...
「こ、こっちに誰かくる!もしかして、シュンかな?でもシュンだったら、
この足音の数がルビさんとココの二人を含めて三人しか響かないはずだ。
それなのにこの足音の多さは間違いなく、三人以上はいる!」
「そ、それではやはり...これは敵なのでしょうか!?」
「そうだね、もしもの可能性も視野に入れて、軽率な動きを取......ん?
こ、この声は...!?」
聞こえてくる足音の多さに敵の場合を考え、アミューが慌てない様、思考を
乱さない様、そして軽率な行動を取らない様にと集中していると、アミューの耳に
足音とは別の誰かの声が聞こえてくる。
「どうしたんです?アミューさん?」
「うん、これは......間違いない!」
アミューの不安な気持ちを取り除くに十分な誰かの声が、どんどん大きく
なって聞こえてくる。
「おお~い、アミュー~!リリちゃ~~ん!こっちは無事に終わったよ~!」
「この声...そして、あの姿...間違いなく、シュンだぁっ!」
手を振りながらこちらへ近づいてくる人物の顔を見て、それが蒼井だと
気づくと、アミューの表情が険しさから満面の笑みへと変わる。
「あ!そ、それにシュン様の後ろにいる人達は......磯下様達ですわ!」
蒼井の後ろにいる人物が磯下達だとリリが気づくと、アミューと同じく
満面の笑みを浮かべている。
「ん?ああ、ココちゃん!駄目じゃないの!勝手に持ち場を離れちゃ!」
「テヘヘ...お兄ちゃんの無事を確認したら、いてもたってもいられなくて...
ごめんなさい!」
蒼井の横にココの姿を見つけたアミューは、プンプンと怒って注意を促すと、
ココがニガ笑いをこぼして、申し訳なさそうに謝ってくるのだった。




