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229話・僕の名前を知っている?


「よし、今だよ~!達也~鈍山君~!」


「おぉぉっしゃっ!今度こそ決めるぞぉぉぉ!ドン亀っ!」


「ゲヘヘ...心の親友であるオイラが、今から行くからねぇぇぇっ!」


緑川の無詠唱魔法で動きをとめている蒼井の元へ、磯下と鈍山が

猛ダッシュで駆けて行く!


「スゥゥゥゥゥ......!おぉぉぉぉおぉい!あおい、しゅぅぅぅぅうぅん!

いい加減、俺達の話を聞けって言うんだぁぁぁぁ――――ッ!!」


磯下が息を大きく吸い込み、そして喉が潰れそうなくらい、思いっきり

叫声を荒らげ、蒼井に呼び掛ける!


「な!?なんだ、あの盗賊!?なんで、僕の名前を知っているんだ!?」


何故か僕の名前を、盗賊の奴が荒らげてくる事に驚いてしまい、思わず動きを

ピタッととまってしまう。


や、やはり、こいつら僕の知っている誰かなのか......?


『そうかもしれませんが、そうでないかもしれません...。仮にもし

そうだったとしても...まずは相手を叩きのめし、戦力を無力化してからです!』


「そっか...うん、そうだよね!」


それにさ...こいつらが盗賊じゃなく、僕の見知った人物だったとしても

その正体が味方と限らない...。


敵であるグリーン貴族か、魔族の仲間がさ、僕の名前を出す事によって、

油断を誘おうとしている...


そんな可能性も否めないよね。


どっちにしたって、ルビさんを攻撃してきた連中なんだ...


その可能性を視野に入れるとしても、まずはナヒの言う様に、こいつらを

全力で叩きのめし...それから後の事を考える!


「ふ、おあいにく様だったな!盗賊改めて、グリーン貴族か、魔族が化けた、

盗賊モドキさんよ!僕の油断を突く算段だったんだろうが...そうはいかないよ!」


こいつら盗賊...イヤ、盗賊モドキ達は、ルビさんを攻撃してきたんだ...


だから僕は相手がグリーン貴族か、魔族が化けている可能性が高いと想定し、

あいつらの名前を挑発する様に言い放って、相手の出方を様子見してみる。


「は、はあ...?グリーン貴族...?魔族...?それは一体、なん―――ウゲラッ!!」


蒼井が発した訳のわからない発言に、ハテナ顔をしていた磯下だったが、そのせいで

動きがとまってしまい、その隙を狙った蒼井に急接近されて、磯下は顔面を力いっぱい

叩き殴られてしまった!


「ったく...僕を油断される前に、お前達が油断しちゃ駄目だろう...?」


「く...そぅぅ...またこいつに、ラッキーが発動しなかったぁぁぁぁぁ......ガク!」


蒼井から叩き殴られた磯下が、大きく弧を描く様に後方へと飛んでいき、

再び壁に思いっきり激突してしまう!


「ふふふ...さぁて、残りは...?そっか...また、キミなんだね?」


「ブヒィィィィイィィィィィ―――――ッ!!!」


ゆらりと鈍山の方に顔を向けてくる蒼井に、鈍山が目を丸くして全開で

ビビり捲る。


「タァァァァ――ッ!」


「ねぇ、聞いて蒼―――ブヒィィッ!?」


「この...テリャァァァァッ!」


「お願いだから、蒼―――ブヒャァァァッ!?」


鈍山が懸命に名前を言おうとするものの、攻撃に集中している蒼井には

全く届かず、その容赦ない攻撃の前に、名前を最後まで言い出せないでいた。


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