223話・既視感なのでは?
「でも、あんな凄まじい爆発でしたのに、全くの無傷だなんて...本当に
その鎧...そしてこの指輪をメイーナ様がお作りになれてたんですね...」
ルビが蒼井の鎧と自分のはめている指輪を、改めてまじまじと見ると、
驚嘆の声がこぼしてしまう。
「.........」
「ん...?どうしたんですか、シュン様。そんな悩んだお顔をして?」
驚嘆している自分の横で、蒼井が真剣な面持ちで何か考えている姿に
ルビが気づくと、ハテナ顔をして声をかけてくる。
「イヤね...あの連中がさ、どうもやっぱり、どっかであったような気が
するなぁ~と思ってさ?」
「あの連中って...あそこにいる盗賊達の事ですよね?」
蒼井の目線の先にいる盗賊を、ルビも同じ様にジィィーと見る。
「多分...気のせいだと思いますよ?だってシュン様、こちらの世界に
いらっしゃって、まだ幾日も経ってないじゃありませんか?」
「うん。確かにルビさんの言うそんな日数の中じゃ、僕の印象に残ってる
連中は数える程しかいないと思うんだよね...」
僕の印象に残っているのって...まず、最初にあった女騎手さん...その後、
カトンにて、門番さん...宿屋のお姉さん...。
ギルドで、アミューとルビさん...森でココと出会い...あの魔族進行の時に
出会った、もうひとりの女騎手のロザリオさんと部下...。
その後、戦いで会った屋台の人達に...宿屋のイアナさんとキッシュちゃん...。
そして敵として出会った...グリーン貴族とか言う奴だろ...ガッコのおっさん...
そこに邪魔に割って入った竜人族の娘二人...色々面倒な連中の魔族達...
で、ここの盗賊...。
僕がこの世界で出会い、印象に残っているは...大体こんなもんだよな?
「もしあの連中と出会っているなら、そこのどこかなんだろうけど...
う~ん、やっぱり全く思い出せない...」
「そうなってくると...そのどこかで会ったっていうより、そもそもが
会っていないのでは?所謂、既視感とかいう類いのやつですよ...」
なるほど、既視感かぁ...。
「うう~ん、それ...なのかな?」
た、確かにルビさんの言う既視感...その可能性は否めないか...。
「でもなぁ...もし本当に僕の知り合いだったら、大変だしなぁ...」
ルビさんの言葉を聞いても、僕はまだもしもの可能性を考えてしまい、
ウジウジと悩んでいた。
『はぁ...いつまでもグチグチと...。やっぱり、主様は戦闘以外では、
全くのヘッポコ決断力ですね...やれやれですわ!』
ナヒは聞こえないくらいか細い声で、蒼井の決断力の無さに深い嘆息を
吐くのだった。