211話・鉢合わせ
「そうですか...ガッコがそんな大それた事を......」
「あの男の思想が殆どだったと思いますが、あの事件の黒幕はあの竜人族の
ヌーザ達です。だから、ガッコだけの暴走って...訳じゃないんでしょうが...」
ガッコの暴走を聞いて顔色を変えるリリ王女様に、僕は更に情報を追加して
それをリリ王女様に伝える。
「ヌーザ...その人物は、私達を襲ったあの竜人族の女...ですね?」
神妙な面持ちでそう述べてくるリリに、蒼井は静かに首を縦に振った。
「でも竜人族が何故、人族のガッコに魔族のアイテムを...」
ヌーザ達が何を考え、ガッコに協力したのか全くわからず、困惑と深刻が
入り混じった表情でリリが頭を悩ます。
「ヌーザ達の意図するものが何かはわかりませんが、それは今度あいつらに
会った時、問いただせばいいだけですよ!」
何が起こっているのかと頭を悩ますリリ王女様に、僕は屈託のない笑顔で
腕をビシッと突き出し、サムズアップを決める。
「だから真面目な話はそこまでにして、こんなカビ臭い場所からさっさと
外へ出ましょう!」
「そうだね。一国の王女様を、いつまでもこんな地下に置いておくわけには
いかないよね!」
蒼井の言葉にアミューが相づちを打って賛同する。
「そ、それじゃ、シュン様。まだ身体が...思うように動きませんので...
そ、その...ま、またお姫様抱っこを...所望しても、宜しい...ですか?」
リリが照れながらそう言うと、両手を広げてお姫様抱っこを嘆願する。
「はは...勿論いいですよ。それでは失礼して...よいしょっと!」
照れるリリ王女様に向け、僕はニコリッと微笑むと、リリ王女様を
ゆっくりと抱きかかえ、お姫様抱っこの形にする。
「へへ...やはり、これは良いものですね♪」
お姫様抱っこをされたリリが、ご機嫌そうに微笑みを浮かべて喜んでいる。
しかし本物のお姫様を、お姫様抱っこする...か。
まさかこんな凄い経験を一生の内にできるとは...本当、人生なにがあるか
わからないものだよね...。
そんな感涙に僕が浸っていた最中...砦の外では、とんでもない騒動が
起こっていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「く...なんね、この盗賊は!めちゃ、手強すぎバイッ!?」
「だ、だよね...。オ、オイラの防御の隙を華麗についてくるし...」
「本当...何なんだ、あのエルフは!?前にあんな奴はいなかったよな!」
「それにあの魔力量は何なの~!私の魔力量の数倍はあるんですけど~!?」
マーガレット、鈍山、礒下、緑川のそれぞれが相手の強さに目を見張って
動揺している。
「と、とにかくぅ~あのエルフさんを何とか倒して~、リリ王女を
助けなきゃ~!」
「嗚呼、そうだな!あんなナイスバディを、多勢に無勢で攻め倒しちゃうのは
流石に気が引けるけど、ここは恵の仇とリリ王女の為だ...心を鬼にしていくぞっ!」
「「「おぉぉぉぉ―――――っ!!!」」」
礒下の気合いに、他の勇者メンバーが雄叫びを上げながら、拳を天に
突き出す!
「ふう...これは中々に厄介な連中ですね。でもまさか、盗賊達にこんな連携の
取れる者がいるだなんて...」
先程の戦い方、そして今の号令し合う姿を見て、ルビが勇者達に感心の念を
送っている。




