202話・プニュ...
「アミューとココは、さっき降りてきた階段近くの通路で見張りを
しててよ...僕はその間、この男の子を救出してくるからさ!」
「うん、わかった。私達に任せて!」
「ここはボク達が誰も通さないから、安心してお兄ちゃん!」
蒼井の頼みをドヤ顔で聞き入れたアミューとココが、胸を軽く叩くと、
急ぎ、階段近くの通路へと駆けて行く。
僕は二人に守りを頼んだ後、牢屋の中に入っていき、衰弱している
男の子をソッと抱き上げる。
「取り敢えず、この猿ぐつわを外して...この、固いな...。よし、取れた!
大丈夫?まだ、生きているよ...ね?」
少し固めに絞められた結び目を外して、生きているかを確認する為、
息をしているか顔を近づける。
「うん...息はしている...鼓動はどうだ?」
僕は心音が低下していないかを確認する為、人質の胸にゆっくりと
自分の耳をソッと当てる。
プニュ...
「はう...!?や、柔らかいっ!?」
耳に伝わってくる柔らかい感触に、僕の心臓がドキッとすると、
慌ててその人物の顔へ視線を向けて、改めてジィィーッと見つめる。
「あ...スレンダーだったから、男の子だと思ったけど...よく見ると結構、
可愛い顔をしている...。もしかして女の子...なのか?」
先程の耳に残る柔らかい感触...そして見た目の可愛さから、そこにいる
人物が女性だと気づく蒼井。
『主様......今、ラッキー!...って、考えましたよね?』
「そんなわけある―――はう!そうだったっ!?ナヒの奴、心が読めるん
だったぁぁぁっ!」
くそ!ナヒの前じゃ、誤魔化しもできやしないっ!
僕が無念の言葉を吐いていると...
『はいはい、見苦しい念は後回しにして、今は急いでその子を助けなさい!
命の危険があるんですから!』
「おっと、そうだった。そんな事で死なせてしまったら、後味が悪過ぎる!」
ナヒから軽く窘められて、ふと我に返ると、僕は今の葛藤を猛烈に反省する。
それにしても、ここまで騒いで反応がないって事は、これはかなりヤバい
状態かもしれないな...。
僕の叫声を聞いても全くの無反応な女の子を見て、僕の表情が神妙な
面持ちになって、額から冷や汗が流れてしまう。
『確かにこれはかなり危ない状態みたいですね。この子の顔色や状態を
見るに、恐らく...ポイズンポーションを飲まされています...』
「ポイズン...毒って事か!なら、益々のんびりできないじゃないか!」
僕は女の子の容態を気にしながら、マジックボックスから急ぎ慌てて
WPを取り出す.....
そして意識がない女の子に飲ませようと、WPを口へ持っていくが、
全く飲んでくれない。
「くそ...盗賊の馬鹿連中が、人質は生きてこそ成り立つものなのに、
それをこんな状態にするなんて...。さてはあいつら、この娘を生きて
返すつもりがなかったな!」
僕は盗賊どもの汚いやり口に、くちびるを強く噛み締めるのだった。