201話・躊躇なく使ってるよね?
「なぁ...?何かさ、上の方が騒がしくないか?」
「そうだな。それにさっきの大きな音も気になるしな...」
盗賊の砦の地下にある牢屋を見張っている盗賊逹は、上の方が
気になって仕方がなかったのだが、親分の命令で動く事も出来ずに
モヤモヤしていた。
そんな時、盗賊達のいる通路奥から、誰かの足音が聞こえてくる。
「ん...誰だ、貴様は?ここには俺逹以外は近づくなと親分からキツく
言われていた筈だが?」
牢屋に近づいてくる人物に気づいた盗賊のひとりが、その人物の前に
武器を構えて動きをとめる。
「そこのお二人さん...。その牢屋の中に人質が入っているのか?」
「貴様...それを聞くって事は...俺逹の仲間じゃねぇな!」
自分達の仲間じゃないと感づいた盗賊二人が、素早く武器を身構える!
「悪いが、お前達と戦っている暇はないんだよ。何せ、人質の安否が
気になるんでね...ナヒ、こいつらにホーリー・チェーンを頼めるかい?」
『いいんですか?金剛石の腕輪を何度も使うと、修復期間が長びいちゃい
ますけど?』
「遅れるもなにも、さっきから躊躇なく使ってるよね...金剛石の腕輪の
効果を思いっきりさ?」
僕はジメ目になって、今までのジャッジメント・サンダーや、先程の
盗賊の親分に使っていたホーリー・チェーンを思い出す。
『ま...それもそうでしたね...。それじゃ、早速!えいっと!!』
「「な!?何だ、無数の光の鎖が俺達を襲ってく――っ!?」」
ナヒがかけ声と共に、無数のホーリー・チェーンが盗賊二人を
グルグル巻きにして捉える!
「おっと、僕に殺意は向けないでね...。もし向けちゃうとその鎖が
お前達の身体を...こう、引き裂いちゃうからさ!」
殺意を向けたらどうなるかを僕は真剣な表情でジェスチャーをして
見せると、盗賊二人が理解できたのか、静かに首を縦に何度も振って
了解を示す。
「さてっと...あの奥に見えるのが、どうやら人質が囚われているという
牢屋だな...」
僕はその牢屋に近づいてその中を覗き込むと、牢屋の奥の方に小柄な
人物がいるのが見えた。
「あの身体の大きさや体格を見るに...人族の男の子ども...かな?
お~い、キミ!大丈夫かぁぁぁ~~っ!」
僕は小柄な人物に向けて、大きな声を上げて呼びかけてみるものの、
全く返答がなく、僕の声だけが空しくコダマする。
「返事が返ってこない...ま、まさか、手遅れ...なのか!?」
『いいえ、まだ死んではいません!返事を返せないのは、あの子が
猿ぐつわをされているからです!』
もしかしてを想像した蒼井が顔が真っ青にしていると、ナヒが人質が
まだ死んでいない事を伝えてくる。
「あ...本当だ。でも僕の声に反応がない所を見ると、かなり衰弱しきって
いるって事だよな...。これは急いで救出しなきゃっ!」
思っていた以上に危ない状態の人質を救出する為、僕は持っていた剣を
横一線に大きく振って、牢屋の鉄格子をバラバラに壊す。




