196話・盗賊の砦
盗賊の親分に、もしもの場合を何度も口酸っぱく釘を刺すと、
僕は改めてアミュー達のいる場所へ移動する。
◇◇◇◇◇◇◇
「ひ、人質...ですか...」
「こいつらみたいな無法者って...本当にクソばっかだよね!」
蒼井から人質の話を聞いて、ルビとアミューが見た目でわかるくらい
嫌な顔をしている。
「それにしても、シュンは甘いよね。こいつらの頭を殺さず見逃す
なんてさ!」
「一応、人質の情報を聞くために、命は取らないとこいつらの親分と
約束しちゃったしね...」
「ったく...それが甘いって言うの!こいつらみたいな連中に対し、
そんな甘い顔をなんてしたら、いつ寝首をかかれるか...わかったもの
じゃないって言うのにさ!」
「はは...それは一応自覚はあるからさ、そんなに心配しないでよ...ね!」
露骨な怒りを露して抗議してくるアミューに、僕はニガ笑いを
洩らす事しかできないでいた。
「ふふふ...まぁいいわ。もしこれで私達を裏切ろうものなら、その時は
生まれてきた事を死ぬ程、後悔させてやるだけだしねぇ...!」
アミューは不気味な笑いを口から洩らし、悪魔のような表情を
している。
そんなアミューの宣言から数十分後。
「ほら...あれじゃない?あの盗賊の親分が言っていたアジトって!」
アミューが目の前に見える砦みたいな建物へ人差し指をビシッと突き出す。
「そうですね、いかにもって感じの建物ですし、間違いないでしょう...」
その建物を見たルビも、アミュー同様その砦で間違いないと太鼓判を
押す。
「善は急げって言うし...早速、突撃しようか、シュン!」
「待ちなさい、アミューさん。私は猪突猛進は感心しません...。
まずは周囲を見回って情報を手に入れて、それから動くのが
セオリーだと思います!」
今にも突撃しそうなアミューにルビが待ったをかけて、その行動を
軽く窘める。
「ええっ!ここは先手必勝で、素早く攻撃したもんの勝ちだと
私は思うんだけどなぁ!」
ルビの作戦に対し、異議を唱える様にアミューの表情が不満全開で
それを否定する。
「いや...僕もルビさんの意見に賛成だ。ああいう死角の多い建物の中は、
しっかり調べた方がいいと思うぞ!」
「うう...シュンが言うなら仕方がないか...。わかった、私も調べてからで
いいよ!」
ルビはともかく、蒼井の意見を否定する気がないアミューは、しょうがなく
二人の意見に乗かった。




