195話・人質
「ば、馬鹿な...この盗賊団【六角】がガキと女如きに全滅されると
いうのか...」
自分の部下達が女や子どもから倒されるという、現実をその目に
見せつけられ...
「さぁ、これで終わりだよ...盗賊の親分さん!」
「うぐぐ......!」
そして自分も今まさに、蒼井にやられそうになっている事へ
驚愕し、その身をブルブルと震わせている。
「残念だけど、僕らを襲おうとした事を不運と呪うしかないね!」
僕はそう盗賊の親分に述べると、その首元に剣を突きつける。
「や、やめろ!い、いいのか?俺をここで殺しても本当にいいのか?
そんな事をすれば、人質が助からないぞ!」
「人質?」
盗賊の親分が発した人質の言葉に、僕は首を傾げてハテナ顔をする。
「な!?貴様ら、あいつらの仲間じゃねぇのか!?」
「なんだよ、その人質とか仲間とか...訳がわからない事を言って!」
「そっか...雰囲気があいつらに似ていたから仲間だと思い、不意討ちで
亡きモノにしてやろうとした結果がこれか...クソ!」
蒼井達があの連中と関わりのない事に気づくと、無念の表情に変わる。
「まぁいい、それで...その人質って言うのは、一体どこにいるんだ?」
「なんだ...人質の事を聞くなんて、やっぱ貴様達はあいつらの仲間なんじゃ
ねぇか!」
人質の事を気にする蒼井に対し、盗賊の親分が疑いの目を向ける。
「僕は聖人君子じゃないけど、外道じゃない。人質を救えるチャンスが
あるなら救ってはみるさ!改めて聞くぞ、人質はどこにいるんだ?」
「ふん...誰が教えるか!あいつを使えば、どれだけの金が入ってくると
思っているんだ!」
「そのどれだけのお金と自分のその命...あんた的にはどっちの方が
上なんだい?」
教える事を否定してくる盗賊の親分の首へ剣先を少しだけ突き刺して、
相手に究極の選択を迫る。
「ぐぬぬ......わかった、教える!教えるから、命は取らねぇでくれ!」
剣を首に刺された事で相手が本気だとわかると、盗賊の親分の表情が
青ざめ、慌てて人質の場所を蒼井に伝える。
「なるほど...。ここから見えるあの山の頂上...あそこにお前達のアジトが
あって、その中に人質がいるんだな...」
「ああ、そうだ。それで間違いはねぇよ!」
蒼井に人質の場所を教えたせいで、盗賊の親分がふて腐れる。
「それじゃ早速、アミュー達と合流をして、そのアジトに行ってみますか!」
少し離れた所にいるアミュー達の場所へ移動する為、俺は足を動かす。
『少し待って下さい、主様。あっちの方へ行く前にこいつを......
ホーリー・チェーンッ!』
「な!なんだ!?そ、その光るチェーンは!?」
アミュー達のいる場所へ向かおうとしたその時、ナヒが蒼井の足を止めると、
ホーリー・チェーンを発動して盗賊の親分へ巻きつける!
『これでよし...っと♪主様、もしこいつが嘘をついたら、即刻チェーンで
締め殺しましょう!』
うわ...相変わらず、いい声で物騒な事を言うよね、このナヒさんは......。
「コホン...そのチェーンは保険だ。さっきも言ったが、僕もお前の言葉を
鵜呑みにする程、聖人君子じゃないからね...。もし、嘘を言っていたら......」
僕は盗賊の親分に向かってそう述べると、そのチェーンが首を締め上げる
ポーズを相手に見せつけるのだった。