185話・竜人族
「パ、パンツ...覗き魔...ち、違う...あれは...あれは......」
地面に転がっていた僕は、強引に起き上がって竜人族ニーズの言葉を
否定しようとするものの、既にニーズの姿はそこにはなかった。
「ち、畜生...あ、あれは覗いたんじゃないのに...目線を上に向けたら、
偶然、僕の瞳に映っただけで、見たくて見たんじゃないのに!」
僕は無念とばかりに地面をドンドン叩いて、この言い表せない悔しさを
口にする。
『でも思いっきり、心の中で「パンツ見えた!ラッキー!」って、叫声を
上げてテンパってましたよね?』
「はう!?」
ナヒの感情の込もっていない口調で述べる図星に対し、僕は目を丸くして
喫驚する。
「コ、コホン!さ、さて...そんなどうでもいい事は、今は横に置いておいて...。
ねぇ、ナヒ」
僕は軽い咳払いをして、この場の雰囲気を切り替える。
『あ...誤魔化しましたね。まぁいいでしょう。それで何ですか、主様?』
「ナヒはあの二人の事を知っていたみたいだけど...あいつらって、
一体、何者なんだい?」
『あの二人は...多分、竜人族だと思います!』
「竜人...族?竜って事は、あのドラゴンの竜っ!?」
『何を当たり前な事を言っているんですか...。ドラゴンなんだから、
竜に決まっているでしょう...?もしかして主様、まだテンパってますか?』
「テンパってないって!ただ、僕の男の子心がさ、ドラゴンに会えたと
嬉しがっているんだよ♪」
『本当ですか~?本当はドラゴンに会えて嬉しいじゃなく、パンツが
見えて嬉しいの間違いでは...?』
ナヒが皮肉タップリの言葉を口にし、蒼井の喜びを疑問視する。
「おい、ナヒさん!僕の心が読めるんだから、それは違うってわかるよね!」
ナヒの皮肉のこもった言葉に対し、僕はジト目をして抗議の言葉を返す。
「ったく...。でもそっか...竜人族か」
あの竜人族の子達と、ガッコの関係が気になる所だけど...
屋台市場を攻撃する事には、参加してなかったみたいだし...今は放って
おいても大丈夫か...。
「んじゃ取り敢えずは、これで魔族モドキ事件は終わりって事でいいよね、
ナヒ?」
『そうですね。ガッコもあの連中に倒されましたし、ガッコの部下達もいなく
なったみたいですし...はい、これで一応は終了ですね。お疲れ様でした、主様!』
回りや屋台市場の近くに、チンピラの気配を感じないのを確認し、僕はやっと
戦闘が終った事を実感する。
「んじゃ、休憩もしたいから、早速イアナさんの宿屋に帰ろうか...。それでナヒ、
アミュー達の方は大丈夫そうかい?」
「はい...大丈夫っぽいですね。強いオーラは、アミューさんとココさんの
二人のしか感じられませんから!」
「そっか...良かった、アミュー達は無事なんだね。んじゃ、遅く帰って
二人から大目玉を食らう前に、宿屋に帰ろうか、ナヒ!」
アミューとココの生存を確認して安堵感に包まれた僕は、イアナさんの宿屋へ
足を向け、急ぎ二人の元へ帰るのだった。