184話・ニーズとヌーザ
「と、とにかく、今が逃げるチャンスみたいだね...。よし、ヌーザ!
あの少年が起きる前に、ここから離脱しちゃうよ!」
空から落ち、地面へ転がる様にして気絶している蒼井を見て、ニーズが
逃げる体勢へと入る。
「び、美人さん......あんな美人さん......」
「...って。おぉ~~い、ヌーザさぁん!人の話、聞いてますかぁ~~っ!」
自分の呼び掛けに対し、全く気づかずボーッと突っ立っているヌーザに、
ニーズがどうしたと言わんばかりの顔をして近づいて行く。
そして、ニーズがヌーザの耳元近くへ口をソッと当てると...
「こら、ヌーザ!なにボケっと突っ立っているのよ!人の話をちゃんと
聞けぇぇぇっ!!」
大きく息を吸い、そして思いっきり大きな声で荒らげ、ヌーザに呼びかける。
「うひゃぁぁぁっ!?い、いきなり耳元で大きな声を上げるんじゃない!
ビ、ビックリしてしまうではないかっ!」
「やっと、気づいたか。ほれ、あの少年が復活すると危険だから、ちゃちゃと
ここから離脱しますよぉ~っ!」
自分の呼びかけにやっと気づいたヌーザに対し、ニーズが地面に落ちていった
蒼井を指差して、そう告げる。
「.........」
「ちょ!?おい、どうしたのよ、ヌーザさん?また、ボーッとしちゃって!?
あ!も、もしかしてこの娘、とうとうボケてしまった......のっ!?」
「誰がボケてしまっただぁぁっ!ぶん殴るぞ、この野郎ぉぉぉっ!」
悪びれないニーズの悪口に、ヌーザが眉をピクピクとさせながら大きな声を
荒らげ、拳にグッと力を入れる。
「フフン~♪残念でした、私は野郎じゃありませぇん~。私は完全無欠の
ぷりちぃ~な女の子...ニーズ・ケ―――ホゲゥッ!!」
反省の色を全く見せないニーズの顎に、憤怒したヌーザの鉄拳が炸裂する。
「この馬鹿者は...ああ言えばこうだな......」
「イタタ...ヌーザったら、酷いな...。今のはちょっとしたジョークじゃん。
それなのに......」
殴られた顎を撫でながら、ヌーザの理不尽な言葉にブスーッとした顔で
ニーズがグチグチと愚痴をこぼしていると......
「ん...なんか言ったか、ニーズ?」
「い、いいえ、いいえ...なんもっすよ!さぁ、帰ろう!我がねぐらへっ!」
ギロッと睨んでくるヌーザに、ニーズが高速で何度も首を左右に振って、
ニガ笑いをこぼして誤魔化した。
「でも美人さん...か。そんな事を言われたのは、初めてだったな......」
「え?今なにか言った?」
「い、いや、なにも言っていないぞ!うん、なにもなっ!じゃ、じゃあ、
ここの報告もある事だし...私は先に行かせてもらうっ!」
ニーズの聞き返しに顔を真っ赤にしたヌーザが、あわあわと動揺しながら
目的の方角に身体を向け、物凄いスピードで飛んで行った。
「美人さんねぇ...」
まぁ確かに少年はヌーザを美人さんとは言いましたよ。言いましたけど、
でもあの少年は「美人さんのパンツが見えた」とか言ってたじゃん......
あいつには美人さんの部分しか、聞こえてなかったのか??
ニーズが心の中でそうツッコんでいると......
ハッ!
「ま、まさか、ヌーザの奴、あの少年にっ!?」
去っていったヌーザと地面に落ちた蒼井を交互に見て、もしかしてこれは
という顔になり、ニーズが目をパチクリとしている。
「おほほう♪これは面白い事になってきた!よし、ここは思いっきり、
ヌーザの奴をからかってやらねばいけないなぁ♪」
ニーズの顔が悪ガキの表情に変わり口角が上がると、思わず笑みが
こぼれてしまう。
「うふふ♪それじゃ~パンツ覗き魔さん~また、お会いしましょうね~♪」
ニーズが満面の笑みを浮かべながら蒼井に手を振ってお別れすると、
ヌーザに合流する為、物凄いスピードで飛んで行くのだった。




