183話・躊躇なし
「げ、解せぬぞ!装備が変わったのはわかるけど、何で体力まで
回復しちゃってるのよ!?」
「それは完全回復ポーションを持っているからだっ!」
納得がいかないといった表情で抗議の言葉を訴えてくる謎の人物に、
僕はその訳を教えてあげる。
「か、完全回復ポーション...ですと......」
その言葉を聞いた謎の人物が、さっきより更に崩れた表情になって
驚きを隠せないでいた。
「イヤ~、これはマジマジで参ったな...。ここまでの強敵がいるとは、
予想外もいい所だよねぇ♪」
「なら、お前が何者なのか、素直に白状するんだな!」
困惑した表情で頬をポリポリと掻いている謎の人物に向けて、
僕は剣を静かに身構える!
「だからぁ~それを教え―――」
「ハァ...遅いと思ったら、ニーズ。いつまでそんな無駄な事をして
いるんだ!」
「な!う、上!?」
いきなり聞こえてくる声の方角...僕達のいる更に上の上空へ目線を
向けると、そこにプカプカと浮かんでいる誰かが目に映る!
「ええぇぇぇ!ちょっと、ヌーザ!なんであっさり私の名前を
バラしちゃうのよぉ!...っていうか、変装くらいしなさいよ!」
「何故、そんな面倒な事をしなくてはならんのだ?私達は見た目で
バレバレだろうに...」
「だから、隠すんでしょうがっ!」
悪びれもなく、淡々と述べるヌーザと呼ばれた人物に対し、ニーズと
呼ばれた女が目を見開いて怒っている。
「ったく...折角の演出が台無しだよぉっ!」
「あ...あの子......」
『はい...あの羽根に長い尻尾...そして頭の両側に角...あれは、間違いなく
りゅ――って、ちょっと!主様っ!!何が「あの子のパンツ丸見えじゃん!」
...ですかぁぁ!ぶっ殺しますよっ!!!』
「だって、しょうがないじゃないか!あんな美人さんのパンツが見えたんだぞ!
男なら何が起こっても、絶対に見――ギャアアアァァァァッ!?」
激おこ状態のナヒに対し、熱意のこもった持論を蒼井が熱く語った瞬間、
白い雷が蒼井の頭上へ直撃する!
「なっ!?何、今の白い雷...ど、どこから降ってきたの...っ!?」
「はうぅぅぅ...ナヒの奴、もう一切の躊躇なく、ジャッジメント・サンダーを
撃ってくるよねぇぇぇぇぇ.........」
ナヒが何の迷いもなく、ジャッジメント・サンダーを撃ち込んでくる事に、
思いっきり愚痴をこぼしながら、僕は地面へと落ちていく。
「あ...落ちた」
そして地面に落ちた蒼井を、ニーズが苦笑をこぼして見ているのだった。