171話・先輩冒険者
「よぉ、朝方ぶりだな、クソガキ!」
「ん...?朝方ぶり...??」
「なんだ、覚えてないのか?あんなに先輩冒険者としての洗礼を
叩き込んでやったのによ!」
朝の出来事を思い出せない蒼井に、先輩冒険者がそれを思い出させようと、
自分の頬をポンポンッと拳で数回軽く叩く。
「ああ、思い出した!あんたは僕のクエストをぶん取った!?」
そうそう、ルビさんに名前も覚えてもらえてなかった、憐れみいっぱいな
先輩冒険者の...!
「ふふ...思い出したみたいだな!しかし残念だったな、クソガキ、
この俺がいなければ、その嘘も真実になったかもしれかったのによぉ!」
「嘘?真実??」
「だが、ここには俺がいた!これでお前がファングさんを倒したなんて
ホラ話は誰も信じねぇ。こちらを油断させる作戦だったようだが、
それも全部、オジャンてわけだ!」
先輩冒険者が下卑た笑いで蒼井を見下すと、人差し指をビシッと突き出した!
『ねぇ...主様。このバカは一体なにを言っているのでしょうか?もしかして
先程の主様の先制攻撃を見ていなかったのでしょうか?』
「さ、さぁ...恐らくだけど、あの先輩さんの事だから、ラッキー攻撃とか
思ってるんじゃないのかな?」
『ああ...ハイハイ、なるほど。それは十二分にありえますね!じゃ、茶ッ茶と
あれを片しちゃって下さい。ハッキリ言って、めっちゃ邪魔ですので!』
うわ...ナヒさん、あいつの事を語っているルビさんと、全く同じ顔をして
いらっしゃる。
「まぁ...正直、僕も朝の事はイラッてしていたし...ガッコに手を貸す輩に
情けをかける筋もないしな!」
朝の事を思い出した僕は、戦いのテンションにその時の苛立ちが上乗せ
される。
「なんだ!俺とやるつもりか?新人冒険者のお前が、ベテランの冒険者である
俺によ!」
蒼井の戦闘体勢に、先輩冒険者が余裕の表情を浮かべて、蒼井の挑発の言葉に
乗ってくる。
「さぁ...こいよ!ベテラン冒険者のドジダ様が戦い方を教えてやるぜぇぇっ!」
ベテラン冒険者こと、ドジダが斧を振りかぶって蒼井に突撃してくる!
「結構、早......くない!?...っていうか、めっちゃトロいな...」
僕に突撃してくるドジダを迎え打つ為に、剣を身構えていたが、相手の動きが
遅過ぎて、攻撃がスローに見えてくる感覚に陥る。
『そりゃそうですよ。だって主様は魔族を200人も倒してるんですよ、
貰える経験値もハンパない量になっていますから!』
「あ...そう言えば、そうだった!僕、一体どれだけLVが上がってるのか、
確かめるのスッカリ忘れていたよ」
それを思い出した僕は、懐からギルドカードを取り出して、自分のLVを
早速、確認するのだった。