170話・部下達の驚愕
「き、貴様...一体、何者なんだ...!この俺様をガッコ様と知っての
狼藉か...?」
ガッコが見た目でもわかるくらいに、苛立ちを見せて口調は獲物を
威嚇するかの様に蒼井を睨んでいる。
「勿論..知っているさ。あんた、あの変態じいさん...首斬りファングの
主様...ガッコだろう?」
「なっ!なんで貴様、ファングの渾名を知っているんだっ!?あいつの
本業は、誰にも気づかれない様にしていたというのにっ!?」
蒼井がファングの裏事情を知っている事に、ガッコが目を見開き、驚きを
隠せないでいる。
「誰って...俺の知り合いのルビさんから聞いたんだけど?因みにあんたとの
繋がりは、あのジイさんがペラペラと勝手に吐露していたんだけどね!」
「ルビ...ああ、あのギルドの受付エルフか...なるほど、あいつなら知っていて
当然だな...」
ガッコが顎に手を置いてルビの経歴を思い出し、納得といった顔をする。
「それにしても...あのアホファングめ、また酔狂して口が軽くなり、
余計な事をペラペラと喋りやがったとは...」
ファングのいつもの起こす愚行に呆れたガッコが、苛立ちながら愚痴を
こぼす。
「だが、あいつの酔狂を聞いてまだ死んでねぇって事は...ファングを
殺ったのは貴様か!?」
「ああ...そうだ!」
神妙な面持ちのガッコの問いに、僕は静かに呟き答えると首を小さく
縦に振る。
「お、おい、聞いたか!」
「ああ、聞いた、聞いた!まさかあのファングさんが、首斬りのファング
だったとは...」
ファングがあの英雄、首斬りファングと知ったガッコの部下達が
驚きで驚愕した表情をしている。
「しかもそのファングさんを、あのガキが倒しただと...。とてもじゃないが
信じられん......」
「だが、さっきの攻撃を見るに、あのガキ...ただ者じゃなそうだし...
万が一にもあり得る話かも知れねぇぞ...」
「そ、そうだな...。あいつのさっきの風の攻撃で、仲間が十数人、纏めて
吹っ飛んで行っちまったしな...」
ガッコと蒼井の会話を聞いていたチンピラ達が、ざわざわと騒ぎ始める。
「いやいや騙されるんじゃねぇ、お前達!多分、そのガキの言っている事は
真っ赤な大嘘だぜっ!」
そんな困惑でざわめいているチンピラ達の声の中に、突如、誰かの声が
割って入り、蒼井の言葉を否定してくる。