16話・先輩冒険者の洗礼!
「悪いな新人...。こいつは俺が先に目をつけていたんでな!」
クエストを横取りし、依頼表を握り締めているゴツい手の方に僕が
目線を向けると、こちらを下卑た表情でニヤニヤと見てくる、
いかにも下品そうな大柄の男が立っていた。
いきなり横暴な気もするが、この冒険者がそのクエストを
先に目をつけていたのなら、焦ってぶんどる気持ちは何となく
僕もわかる...なので...
「そうだったんですか...それはすいません...」
...先輩冒険者へ謝罪の言葉を口にした。
「ああん、それが先輩冒険者に対する謝り方か!もっと誠意を
見せて謝れや、ゴラァッ!!」
その言葉をきっかけに、周りから下卑た笑い声の大合唱がギルド内に
響き渡る...。
「あ...さっきの子。やっぱり、ちょっかいをかけられてる...!
止めるべきなんだろうけど...それじゃあ、規則を破っちゃう事になるし...」
受付嬢のお姉さんが、助けに行くべきかと迷いを見せている最中も
下卑た先輩冒険者の言葉は続く。
「どうした...?ほら、誠意を見せろって言ってんだよ!」
はあ...面倒だな...こっちはそれ所じゃないのに...。
でも、メイーナの装備が自動防御を始めたら、もっと面倒だよな...
ここは素直に謝っておくか...。
「先輩、すいませんでし―――」
僕はさっきより頭を深く下げ、謝罪の言葉を口にしたその瞬間、
先輩冒険者から思いっきりお腹を蹴り飛ばされて、その反動で
反対側の壁へ激突する。
先輩冒険者のこの行為は、流石にやり過ぎだったらしく、今まで
騒がしかった周りの下卑た笑い声が静かになった...。
「チッ...!こ、今回はこれで許してやる!今度からは先輩に対する
態度をちゃんと改めろよ...ふん!」
バツがわるくなったのか...先輩冒険者が焦った表情で、先程僕から
ぶん取ったクエスト依頼表をポイッと投げ捨て、その場を去って行った。
「いててて......って、あれ...痛くない...?」
痛くないって事は...自動防御はちゃんと発動してる...のか?じゃあ、何で
冒険者の攻撃を防御せず、僕は殴られて吹っ飛ばされたんだ?
僕はそれを不思議に思い、メイーナがこの腕輪の事を詳しく説明して
いた時の事を、懸命に思い出していた...。
嗚呼!思い出したっ!確か、この腕輪の自動防御って...全部で5段階
分かれてるんだった!そして、効果は......
僕は強引に装備させられた、この腕輪の自動防御効果の説明を
メイーナがしていた時の事を、やっと思い出した...。