157話・キャンセル料
「イヤイヤ、まずいでしょう!男の俺が女性二人と一緒の部屋だなんて!」
「え...なんでですか?二人ともお客様のこれでしょう?」
キッシュがニンマリといやらしく微笑みを見せると、蒼井の自分の
小指を立てて見せる。
「違う、違う!アミューは僕のパーティ仲間で、ココは...」
「そう...お兄ちゃんの為に生まれてきたと言っても過言ではない、
絶対なる忠実な奴隷のココです!」
蒼井がココの紹介をする前に、ココが自分の自己紹介を鼻息荒く
自信満々な表情でキッシュへとする。
「ちょっと、ココさん!?その奴隷って言うにはやめてって、何度も
言ったよねぇぇっ!?」
ほら、見てみなさいよ...キッシュちゃん、めちゃくちゃ引いた顔をして
いらっしゃるじゃないですか!
「コホン...ね、ねぇキッシュちゃん。こことは別に僕の部屋を取る事は
できるのかな?」
僕は軽い咳払いをしてその場の空気感を変えると、キッシュちゃんに
その事を聞いてみた。
「お客様の部屋を新しく...ですか?」
「......」
「......」
「えっと...あ、あいにく、他のお部屋は満室や訳あって使用できない
状態ですね。すいません!」
蒼井の後ろにいるアミューのアイコンタクトに感づいたキッシュが、
すました顔で部屋はここだけだと頭を下げた。
「ナイスジョブ!」
キッシュのその素早い行動に、アミューが腕を突き出してサムズアップを
決めて、キッシュを褒め称える。
「それにですよ、仮にそれをやるとしたら、キャンセル料に金貨2枚、
新たに部屋代が金貨2枚、合計金貨4枚かかっちゃいますよ?」
「な!き、金貨4枚...だと!?」
ゴブリン退治と屋台のクエストで約金貨1枚だった事をふと思い出すと、
キャンセルするには、その4倍の金貨がかかる事に目を見開いて
ビックリしてしまう。
「ですので...キャンセルはあんまりオススメはできないかな!」
消費金貨の多さに目を白黒させている蒼井に、ニコッとキッシュが笑い、
キャンセルはしない方がいいと、アドバイスをしてくる。
「し、しょうがない...。流石に金貨4枚は出せないと言うか、そんなに
持っていないので...受け入れるしかないか...ハァ」
僕は皮袋の中を覗き込んで、今入っている硬貨数を眺めると、諦めの
ため息がこぼれる。
「それでは、あと1時間後に食事の用意ができますので、時間がきたら
下に降りて来てくださいね!では♪」
キッシュが蒼井達に一礼すると、トタトタと足音を響かせ下の階へ降りて
行くだった。