154話・納得いかないココ
「こ、恋人!?わ、私とシュンが恋人...!」
宿屋の女主人から発された恋人発言に、アミューが顔中を真っ赤に
染め上げて、身体を悶える様にクネクネさせて喜びを露にしている。
「むむむ...今の発言、ちょっと待ったぁぁぁ―――っ!」
アミューが蒼井の恋人と言われている事にココが納得いかないと
言わんばかりに、右手をビシッと天へ突き出して挙手をする。
「ん...なんだい、獣人のお嬢ちゃん?そんな必死な顔をして?」
「お、お兄ちゃんの恋人はボクですよ!ボク!そこを間違えないで
下さいっ!」
「お嬢ちゃんが...この少年の恋人...ねぇ?」
「な、なんですか、その憐憫なモノでも見るような表情は!?」
同情いっぱいの表情をこぼし、ココを見てくる宿屋の女主人に対し、
ココがムッとしたジト目で返す。
「いや...そう言う発言は......もうちょっと色々と大きくなってから
言おうね、お嬢ちゃん♪」
「はにゃ!?うにゃ!?」
宿屋の女主人が、ココの後ろに回ってニヤリと口角をあげると、お尻や
胸を触ってくる。
「うう...失礼な人ですね!いいじゃないですか、こんななりのボクが
恋や愛だと言ってもっ!」
役不足と言ってくる宿屋の女主人に、ココが耳や尻尾をピンッと立てると、
頬を膨らませて憤怒する。
「はは...ゴメンね、獣人ちゃん。そこのポニーテールお姉ちゃんの事でも
わかるように、うちのイアナお姉ちゃんって恋愛関連がからっきしでさ、
だから、あんまり気を悪くしないであげて!」
プンプン怒っているココに対し、キッシュが宿屋の女主人...イアナの事で、
頭をペコペコと下げて謝ってくる。
「わ、悪かったわね...恋愛経験が乏しくて...。それに私がモテないのは
男の方が悪いのよ、男が!大体、あの時だって男の癖にさ......」
「あ...ネガティブモードに入った...」
キッシュに恋愛不足と言われて、イアナがその事で何かを思い出したのか、
顔色が暗くなり、聞こえないくらいのか細い声でブツブツと呟いている。
「ささ...こんなお馬鹿な人は放っておいて、お姉ちゃん達はどんな感じで
お泊まりになられるんですか?」
頭を垂れて未だにブツブツと呟いているイアナを無視して、キッシュが
宿屋の商売の方を始める。
「別々にお泊まりですか?あ...聞くだけ野暮でしたね!勿論、三人とも
一緒にお泊まりに決まってますよね♪」
「三人とも...」
「い、一緒にですか...!?」
ニヤニヤと言った表情を浮かべるキッシュがそう述べると、ココとアミューが
目を見開いて喫驚している。