152話・宿屋イアナ
「それじゃ...ここでこうしててもしょうがないし、そろそろ中に
入ろうか!」
「うん、そうだね。日も暗くなってきた事だし...何か小腹も空いて
きちゃったしねっ!」
アミューがまだ食い足りないと言わんばかりに、お腹を擦っている。
「こ、小腹が空いてきたって...確か、アミューお姉ちゃん...さっきの
パーティーで結構な数を食べていましたよね?」
「はは...ちょっとココちゃん、そんなにジロジロとお腹を見ないでよ!」
ココが目を丸くしてアミューのお腹を見てくるので、顔を真っ赤にして
アミューが恥ずかしそうにお腹を手で隠す。
「と、とにかく、私は育ち盛りなんだから、少々お腹が空いてもいいのよ!
ほ、ほら!ちゃっちゃと中に入るわよ!」
「あ、ちょっと待ってよ、アミュー!」
ココの目線を逃れる様に、急ぎ慌ててアミューが宿屋の中へ早足で
移動して入って行く。
「あ!ようこそ、宿屋イアナへっ!!」
宿屋に入った蒼井達を出迎える様に奥の部屋から、パタパタと足音を
立てて、こちらに女性らしき人物が近づいてくる。
「え...と、皆さんでお泊まりですか?」
出迎えくれた女性...というより、女の子が首を傾げて僕達に対し、
そう聞いてくる。
「あ、はい。みんなで三人なんだけど...大丈夫ですか?」
「三人様っと...はい、大丈夫ですよ。何せここはあんまり冒険者や
旅人には馴染みのない宿屋ですからね~はは!」
蒼井の問いに、宿屋の女の子がニガ笑いをこぼす。
「おお、何か騒がしいと思ったら、お客様だったんだ!」
女の子と会話をしていると、先程女の子が出てきた部屋からとてもキレイな
女性が出てきて、こちらに笑顔で近づいてくる。
「でもあんた達、よくもまぁ...こんなマイナーな宿屋を選んだもんだね♪」
「もう!お姉ちゃん!自分でマイナーだなんて言わないでよ!」
蒼井達の事を感心しているか、呆れているのか、よくわからない表情で
自虐を述べる女性に対し、女の子が膨れっ面で怒りながらその自虐へ
説教を洩らす。
「にゃはは...ゴメン、ゴメンって!冗談なんだから、そんな顔をして
怒んないの!折角の可愛い顔にシワが出来ちゃうぞ♪」
「うう...相変わらず、軽いと言うか...楽観的と言うか...」
女の子の肩をパンパンと叩きながら、女性がケラケラと笑って誤魔化す。
「や、やっぱ...アンジュさんの紹介だけあって、中々な宿屋みたいだね...」
アンジュと似た豪快な喋りや態度の女主人を見て、アミューがニガ笑いを
こぼしていた。