151話・魔族の魔導兵器
「おい、あれだ!急いで例の『あれ』の準備をしろぉ!」
屋台市場から、無様に逃げ出してきたガッコが屋敷に帰ると、叫声を
荒らげて部下達に例の準備をさせる。
「れ、例のあれとは、魔族の魔導兵器の事ですよね?しかしあれは、
人用として使うにはまだまだ未完成で、使用するとどんな副作用が
あるかわかりませんよ!」
「副作用だと......そんなもの、この怒りと比べれば、クソみたいな...
クソみたいな事だぁぁぁぁ―――っ!!」
「グハァァアッ!?」
ガッコに進言してきた手下に激昂したガッコが、理不尽な言葉を吐き捨て
思いっきりその手下をぶん殴る。
「貴様らもこうなりたくないなら、四の五の言わずにさっさ準備をしやが
れぇぇぇっ!!」
「は、はい!わ、わかりました、ガッコ様!ただいま、準備をして参ります!」
威圧感タップリの叫声にビビった手下達が、慌ててガッコの言う準備をする為に
行動する。
「くくく...見ていろよ、クソ共!この魔導兵器を使って、貴様らを惨めに叩き
つぶしてくれる!俺様に降伏した方がよっぽどマシだったと思う程になぁっ!!」
ガッコがアンジュ達の惨めたらしくのたまう未来像を想像して、ほくそ笑みを
浮かべる。
その頃......
ガッコがそんな目論見を企てているとは露知らない蒼井達が、アンジュに
紹介された今日泊まる宿屋の前に立っていた。
「え...っと、『宿屋イアナ』......。うん!どうやら、ここがお姉さんの
紹介してくれた宿屋で間違いないみたいだね!」
僕は紹介状と宿屋の看板に書いてある宿屋の名前を交互に照らし合わせて
見ると、紹介してくれた宿屋の名前が、紹介状に書いてあるの確認する。
「ほへぇ~!見た感じ、中々格式が高そうな宿屋みたいだけど...本当に安く
泊まるのかな?」
「だよね...これでお金が足りないとなれば、他を探さなきゃいけなくなって、
ヘタしたら野宿決定の可能性も視野に......」
見た目にも小綺麗な宿屋に、アミューと僕は宿代のお金が足りるのかと
少し不安になってくる。
「まぁ...最悪、足りなかったら私が出してあげるわ!」
「そ、それは流石に悪いよ...」
ドンと胸を叩くアミューに、僕は手をフルフルと振って断りを入れる。
「何を言ってるのよ、仲間を放り出してノコノコと1人で宿屋に泊まるわけ
ないじゃない!それこそ、シュンの言う冒険者のルールに背く行為だよ!」
アミューがジィィーっと蒼井の顔を見て、この前に述べていた冒険者の
ルールを口にする。
「そうだよね...。ありがとう、アミュー。じゃあ、もし足りなかったら
借りるという形にして、後できっと返すからね!」
「はは...本当、意外に律儀な性格だよね、シュンってば...イヤ...
融通がきかないと言った方がいいのかしらね......」
奢ると言っているのに、ちゃんと返すと言ってくる蒼井にアミューは
苦笑をこぼして、少し呆れてしまうのだった。