145話・ココの苦い思い出
「う、うまい!これはめちゃくちゃにうまい焼き鳥だぁ!」
両手に持った焼き鳥交互にパクパクと食べて、アミューがその瞳を
キラキラとさせる。
「ほ、本当だ!焼き鳥ってこんなに美味しい食べ物だったんだね...」
同じ様に瞳をキラキラさせながら、ココがしんみりと焼き鳥の味を
噛みしめて食べる。
「え!?ココちゃん、焼き鳥を食べた事なかったの?」
「はは...ボクって生まれもわからない孤児でして、生きるのに必死で
こんな美味しい物を食べている余裕はなかった...ですから」
アミューの問いに、ココがニガ笑いをこぼしながら悲しい顔をして、
昔の事を口にする。
「それにその後、奴隷商人に掴まっちゃって...そこでも生きるのに
必要な食事しか与えてもらえず...その後にボクを買った前のご主人様にも、
録な食事はさせてもらえませんでしたので......」
「.....」
「その前のご主人様が美味しそうに食べていた数々の食べ物を見て、ボクも
いつかあの食べ物を食べられる様になれるかな...なれたらいいな...って、
ありえもしない夢物語を毎日、毎日と描いていたんです...」
ココが呟くように語る、あまりの生きざまに対し、アミューの表情が
ドンドン暗くなっていく。
「だから、今ここにこうしている事が...お兄ちゃんやお姉ちゃん達と
一緒にいられる事が本当に奇跡みたいって感じて...これが夢じゃなきゃ
いいなって...思っちゃうんですよね...エヘヘ」
ココは今の生活を夢の世界の様に感じている事を、ニガ笑いや困惑を入り交じめ
アミューに嬉しそうに語った。
「うおおおぉぉぉ――――っ!ココちゃぁぁぁ―――――んっ!!」
「うにゃ!?な、なんですか、アミューお姉ちゃん!?い、いきなり
抱きついてきて...ビ、ビックリするじゃないですかっ!?」
「ごめんね~!だってココちゃんいつもお日様の様な笑顔を見せて
くれるものだから、そんな事を思っていただなんて、ちっとも
思わなかったから~~!」
アミューが今にも泣いちゃいそうな顔をしてココに謝罪の言葉を
口にする。
「わ、わかりました、わかりましたから離れて下さい~!凄く
暑苦しいです~!」
「なっ!?」
露骨に嫌がるココを見て、アミューが軽くショックを受ける。
「むむ...暑苦しいは酷いな...。そんな娘には~ほれ、ほれ~♪」
「はにゃ!?耳をサワサワするをやめて下さい~!うにゃんっ!?」
アミューが意地悪な表情でニカッと笑うと、仕返しと言わんばかりに
ココの耳を優しい手つきで撫で回す。




