143話・再び、掴んで走り去る!
みんなにクエスト報酬を分けた僕は、チンピラ撃退パーティーを行う会場、
屋台市場へ向かう為に、ギルドを出てみんなと一緒に移動する。
「ねぇ...お兄ちゃん、本当にボクも報酬の分け前を貰っても良かったの?」
僕の横を歩いてるココが、手に持っている報酬の硬貨を困惑した表情で
眺めながらそう言うので......
「ココが報酬を貰う権利はあるさ、だってココは、僕のパーティメンバーの
1人として、クエストを受けたんだから!」
...っと言って、僕はココへ微笑みを見せる。
「でもボクがパーティに加わるのは、ボクがお兄ちゃんの従者だからだし...」
「従者だろうが何だろうが関係ないさ、パーティで受けたクエストの報酬を
受け取る事にはね!」
「はうっ!?」
申し訳なさそうにしているココに、蒼井がニカッと笑顔を見せると、
ココの頭に手をポンッと置いて、わしゃわしゃと撫で回す。
「うん...わかった。ありがとう、お兄ちゃん♪」
頭を撫でられながらココが上目遣いで蒼井の顔を見ると、お日様の様な
笑顔でニコッと笑い、尻尾をフリフリと左右に振っている。
「ああ!シュンの奴、またココちゃんだけ、可愛がってる!」
蒼井とココのイチャイチャを後ろから見ていたアミューが、二人の
やり取りに対し、プンプンと怒って嫉妬の念をこぼす。
「まぁまぁ、落ち着いて下さいよアミューさん。実際の話、ココちゃんは
可愛いですし、構いたくなるのはしょうがありませんよ!」
「うう......た、確かに、その言葉に反論はないけどさ...。でも、あの
撫で撫でを見ると、つい......」
ルビの言葉に肯定するアミューだったが、蒼井とココの二人の方に
再び目線を向けると、ちょっと悔しい表情をこぼす...そして......
「もう、我慢ならん!てやぁぁぁぁ―――っ!!」
アミューが吐き捨てる様にそう発すると、蒼井とココ達のいる場所へ
素早くダッシュして駆けて行く!
「ん...?あ、アミューお姉ちゃん!?ど、どうしたんですか、そんなに
血走った目をし――――はうっ!?」
アミューの凄みにココが目を丸くして驚いていると、アミューがココ目掛けて
飛びかかる様にジャンプし、その勢いでガッとココを掴む。
「ひゃははっ!ココちゃん、ゲェェェ―――ットッ!!」
そして、そのまま持ち上げて小脇に抱え、蒼井の元からココを奪取して
行く。
「うにゃぁぁ~~!?ま、またですかぁぁぁ~~~っ!?
お兄ちぁぁゃん、助けて下さぁぁぁぁ~~~~いっ!!」
ココの助けの声空しく、その声が聞こえ終わる頃には、既に蒼井の
場所からは、豆粒の大きさにしか見えないくらいに離れて、そして
消えていった。