14話・金貨一枚
「すいません~。ここにギフトを判定できる場所があると聞いて
来たんですが...」
僕はカウンターで受付をしてるお姉さんに声をかけ、ギフト判定を
したい事を伝える。
「ああ、ハイ。ギフトの判定ですね...。ギフトの判定には料金が
金貨1枚必要なのですが、よろしいでしょうか?」
「へ...き、金貨1枚...必要...だと...!」
「ちょ、どうしたんですか?いきなりこの世の終わりの様な顔をして...!?」
蒼井はギルドの受付嬢に、自分の今の状況を説明した...。
「なるほど...そういう訳で、手元にお金が一銭もないんですね...。
それは可愛そうに...」
「はい...恥ずかしい限りですが...」
流石にメイーナの事を言うと厄介な事態になりそうなので、ここは
適当な言い訳を使って、受付嬢を誤魔化す事にした。
「では、クエストをしてお金を稼ぐというのはどうでしょうか?
冒険者登録はもうお済みですか?」
「いいえ、まだ登録はしてません。ギフト判定をしてからしようと
思っていたもので...」
「わかりました...。では、こちらに冒険者登録の記入をしてもらって
よろしいでしょうか?」
「あ、はい...」
記入って、僕...こっちの文字を知らないぞ...。
ん...あれ?そう言えば、さっきの看板の文字とか、ここの看板とか、
普通に読めてたな...?
本当、普通に読めたから気づかなかったよ...。でもだからっと言って
読めはするけど、書く事はできるのかな...?
お...書ける!何か凄いな...!俺は自分の世界の文字を書いているつもりなのに、
記入欄にはこっちの文字になって記入されてるじゃん!
僕はこの不思議に驚きながらも、無事に記入欄へを全て埋めた。
「これで...いいでしょうか?」
「では、お預かりしますね...。ふむふむ...名前はシュン・アオイ...年齢は16歳、
ギフトはまだ判定なしで、出身地は内緒...これに間違いないですね...?」
「はい、それで間違いないです!」
「でも、出身地は内緒って...やっぱり、さっきのシュン様のお話に出ていた、
あれのせいですか?」
「え...?あ、はい!僕が今ここにいる事は知られたくないんです...」
「やはり、そうなんですね...」
先程の僕の言い訳を信じた受付嬢が、沈痛な面持ちでこちらを見ている。
すいません、受付嬢のお姉さん!さっきの話は嘘なんです!
だから、そんなうるうるとした表情で同情はやめて下さい~心が痛みますからっ!
僕は今にもこのセリフを口に出して言いそうになるが、グッと我慢して
口を噤む。
「それでは冒険者登録の申請をしてきますので、しばらくお待ち下さいね...」
受付嬢が瞳にうるうると溜まった滴を指でそっと取ると、奥の部屋へ
足を向け、歩いて行く。
「あの受付嬢のお姉さん...とっても純情なんだな...。ハア、本当に心苦しい...」
うるうるさせて、マジ...すいませんっ!
奥の方へ歩いて行く受付嬢のお姉さんに、僕は心の中で手を合わせ、
謝るのであった...。