119話・お姉さんのキス
「ああ!やっぱり、そんな事を考えていたんだね!シュン!」
「あれほど、そんなことは考えていないと、おしゃっておられまし
たのに......」
激昂するアミューと、困惑した口調をこぼすルビが、蒼井の事を
呆れた表情で見てくる。
「ち、違うんだ!アミュー!それにルビさん!い、今の言葉はココの
お茶目なギャグであって...け、決してそんな事は...ちっとも僕は考えて
なんかい―――」
「............」
はう...っ!?コ、ココさんの悲嘆したそのお顔......
今...僕の心の声を聞いていらっしゃるんですね...!?
わかってます、わかってます!言いたい事はわかっています...
だ、だからそんな冷めた哀しそうな瞳で、こちらをジィィーと
見んといて下さい......!!
『はあ...本当に主様は...はあ...本当に主様は......』
ちょっと、ナヒさんまで僕の心の声をっ!?
そ、その呆れ口調で、吐き捨てる様に何回も呟くのはやめて下さい!
僕の心が耐えられずに、砕けてしまいますからっ!!
こ、これは駄目だな...心の中をココとナヒの二人に読まれ、それを
アミューとルビさんで邪魔する布陣......
ハイハイ、僕のご褒美チュウの運命はここで試合終了ですね...
あまりの完璧な鉄壁ガードに、諦めの言葉が僕の頭の中を過っていく。
「ふふ...あっははは!本当、坊やは面白いねぇ......♪そうだよね、
約束だったものね......」
「え...お、お姉さん......!?」
「へ...ちょっ!?」
「あう、あう、あう...!?」
「はにゃっ!?」
アンジュがニコッと微笑んで蒼井の顔を両手で掴むと、自分の顔に
ソーッと近づけて、蒼井の唇を自分の唇へと重ね合わせた。
お、お姉さんっ!?おお、お姉さぁぁぁぁ―――んっ!!?
僕は突然の出来事に動揺全開で慌てふためくと、顔中を真っ赤に
頭の中は真っ白になって狼狽えてしまう。
「はい、ご褒美タイム終了♪」
そう言ってゆっくり唇を離すと、突然の事にボケェーッと立っている
蒼井に、アンジュが可愛くウインクをパチッと見せる。
「ふふ...。でも良かったのかしら?こんな私みたいなおばさんの
キスがご褒美でも?」
「ひ、ひゃい!そ、そんな事はありません!ご褒美のキス...
マジ、ありがとうございましたぁぁぁぁ―――――っ!!」
クスクス微笑んでいるお姉さんに対し、僕は最大の感謝の念を
こめまくった完璧なお辞儀をビシッと決めた。