115話・決着
「ん...?何かあっちの方も、静かになったね...?」
蒼井達のいる場所から聞こえてきていた、戦闘の音が聞こえなくなった事に
気づき、その方角へ目線を向ける。
「シュン様は無事なんでしょうか...。何せ、シュン様の戦っている相手は
あの首斬りファングですし......」
首斬りの異名の成せる力を知っているルビが、心配な表情して蒼井の
戦っている方角を祈る様に見つめている。
「Sランクのルビさんをここまで不安にさせるなんて...やっぱ、凄い奴
なんだ...あの変態じじい......」
ルビの不安そうな顔を見て、アミューも不安な感情が高まり、心配で
胸をドキドキさせてしまう。
「大丈夫ですよ...何故なら、お兄ちゃんはこの世界を救いし存在...伝説の
勇者様なんですから!」
不安な表情で気を落としているアミューやルビに、蒼井を信じきったココが、
自信満々な表情で二人にそう述べる。
「うん、そうだね...ココちゃんの言う通りだよね!だってシュンは、あの女神
メイーナ様から特別な加護を貰った、伝説の勇者様で...」
「更にあの人類の宿敵と言われる魔族を、何十人も倒された猛者ですものね!」
ココの自信に充ち溢れた言葉を聞いて、アミューやルビも蒼井の勇者の強さを
思い出し、信じきった表情へ変わる。
「ん...このにおい?何かがこちらへ近づいてくる...。くん、くん......ああ!
これは間違いない!お兄ちゃんのにおいだっ!」
「え...シュンのにおいっ!?」
ココの鼻がピクピクと動き、誰かのにおいを感知すると、そのにおいが蒼井の
ものだと気づく。
「お~い!みんな~!そっちの方はもうすんだのかい~!」
ココの向いた方角に目線をおくると、そこには蒼井の姿があり、自分達の方へ
近づいてくるのが見えた。
「ふう...意外に遠かったな...」
僕はじいさんと戦っていた場所を見ると、その景色がボヤけて見える。
「ふふ...この屋台市場の広さは全体で、約数キロにも及ぶからね♪」
「あ、お姉さん!どうやら、無事だったみたいですね!」
「何を言っているんだい坊や...それは全部、こっちのセリフだよ...。
あのファングのじいさんと戦って、そんなピンピンの状態で帰って
こられるなんて...本当に凄いんだね、坊やは!」
自分を心配してくる蒼井にアンジュの方も、蒼井が無事に戻ってきた事へ
ホッとした表情を浮かべる。
「お姉さんが無事なのは当たり前でしょう!だって、この私やルビさんが
守っていたんだからっ♪」
アミューがそう言い放つと、胸をドンと叩いてドヤ顔を浮かべる。
「ムム...ちょっと、アミューお姉ちゃん!ボクの事を忘れていませんか!」
「あ...ゴメン、ゴメン!そうだった!ココちゃんも大活躍だったよねっ!」
自分の事を忘れられ、頬を膨らませプンプン怒っているココ対し、頭を何度も
ペコペコと下げて謝るアミューだった。