112話・ツンデレ
「で、でもさ...菜妃って、ナビと少ししか変わらないよね?本当にいいの?」
『何を言っているんですか、ナヒとナビ、天と地程の差がありますけど?
それもわからないとは...だから、主様はセンスがゼロなんですよ!』
蒼井の問いに対し、ナビゲーションが蔑む様な声を発して、それを
小馬鹿にした態度を見せてくる。
「セ、センスゼロ...!?そこまで発展しちゃうの、今の会話ってっ!?」
もうマジでこのナビゲーションさん、口の悪さが底なしなんですけどぉぉっ!?
それに、さっきは好意の名前を呼ばれるのは嫌って言っていたのに...
なんでこの名前はいいんだ...?
『それはその名前の響きに、感銘を受けたからですよ!』
ああ!そうだった!この子、僕の心が読めるんだったぁぁっ!?
『ハァ...主様は表も裏も、叫声を上げてばかりですね...だから、その年齢まで
恋人ができないんですよ...!』
ナビゲーションが先程からの蒼井の発する喫驚な叫声に、呆れた口調で
嘆息を洩らす。
こ、こいつ...人の傷つく事を何度も言いおって...うう、ちくしょうっ!
『ホコン、とにかく...今からはナビゲーション改めて、ナヒと読んで下さいね!
あ...少しでも好意を込めて呼んだら殺っちゃいますから、そのつもりで!』
「少しでもって...それはいくらなんでも無理だよ!その名前を呼ぶと、
少しくらい好意の感情が入っちゃうに決まっているだろう!」
だって、その名前は、お、僕の初恋の娘の名前なんだから...!
『むむ...し、仕方がありませんね...。少しくらいなら、こ、好意が
こもっていても、ゆ、許してあげてもいいですか!で、でも少しだけ
ですからね、少しだけ!』
ナビゲーション改めて、ナヒがツンデレっぽい事を言い出して、
蒼井の言葉を肯定する。
「あ、ありがと...感情がこもらない様、努力します...」
『い、イヤ...た、たまには、感情がこもってもいいですよ!
わ、私は寛大な、ナ、ナビゲーションですからっ!』
蒼井の感情がこめないという言葉を聞いたナヒが、慌てた口調で
更にツンデレッぽい事を言い出して、感情のこもりを許してくる。
「そっか...じゃ、遠慮なく感情を込めさせてもらうね、ナヒ!」
ツンデレなお許しをしてくるナヒに対し、僕はニコッと爽やかな
笑顔を返す。
『はう!こ、これが、メイーナ様やあの小娘どもを恋の虜にした、あの
鈍感笑顔か......。た、確かに、これはグッとくるものがありますね...!』
ナヒが自分の人格メイーナや、蒼井のパーティメンバーのアミュー達が
その無自覚な笑顔にダウンしてた事を思い出すのだった。