109話・消しちゃってもいいですか?
『はあ...まさか、疑似人格の私にもそんな事を言ってくるなんて...本当に
主様はクソ野郎ですね...』
「ええぇぇっ!可愛いって言ったはずなのに、何故にクソ野郎呼ばわり
するの!?」
何、この清々しいにも程がある、躊躇のないお言葉......
このナビゲーションって、メイーナの人格をモデルにしているなら...
これがメイーナの本当の性格なんだよな...
さっきの魔族と戦っている時に僕と会話をしていたメイーナの事を思い出し、
ちょっと信じられないな...と、ニガ笑いがこぼれてしまう。
イヤ...まてまて、今の言葉取り消し!
翌々考えてみたらメイーナの奴、人族や魔族...そして僕のクラスメイト達には
こんな感じだったわ!
『何をボーッと間抜け顔をして、突っ立っているんですか主様?』
くそ...何か、どんどん口が悪くなっていないか、このナビゲーションさん...。
『コホン、所で主様...』
「ん...何だい?」
ナビゲーションが軽く咳払いをして、話を切り替えてくる...。
『さっきから、このジジイがうっとしくてしかたがないんですけど......
もう、消しちゃってもいいですか?』
「く...何なんです、この防御幕は...!潰しても潰しても、次々と沸いて
出てきてっ!え~い、腹が立ちますねっ!」
蒼井との会話中に、何度も攻撃を仕掛けてくるファングの姿を見て、
ナビゲーションが呆れ口調で進言してくる。
「確かにうっとしいけど、ちょっとサクッと言い過ぎ...」
『で...どうします...殺りますか?』
うあ...この聞く耳持たずの性格...やっぱ、モデルがメイーナなだけ
あるな...。
「ま...僕もこいつに慈悲を出すつもりはないから、キミに任せるよ!」
『了解...主様の承認を獲ました...。それでは、金剛石の腕輪のランクアップを
開始しちゃいま~す。はい、ランクアップ終了しました♪』
「え、もう!?えらく、早かったね...」
『出前迅速が私のもっとうですから...では、早速いきますねっ!
食らってくたばれぇぇっ!ジャッジメント・サンダァァァァ――――ッ!!』
「なっ!は、早いっ!?こんな早さ、避けきれるわけが―――グギャァァァッ!!」
ファングの頭上へ再び降り注がれるジャッジメント・サンダーを同じ様に
交わそうとするものの、先程の白い雷のスピードと段違い過ぎて全く回避が
間に合わず......
「わ、私の腕が...消え去った...ですとぉぉ......っ!!?」
白い雷に剥ぎ取られ光の中へ消え去っていく自分の左腕を、困苦にまみれた
茫然自失な表情で、ただ見つめるしかなかった...。