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105話・ファングの動揺


「ちょっと、待ってください!いくらなんでも、あのファングさんを

1人で相手にするのは無理があると思うんですが!」


ルビが心配そうに瞳をウルウルとさせて、蒼井の事をとめてくる。


「大丈夫ですよ、ルビさん。僕も補欠とはいえ、この地に勇者として

立ったからにはこれくらいの困難...乗り越えなきゃいけませんし!」


僕はそのルビさんの心配を払うかのように胸をドンと叩き、自分の信条を

熱く語って聞かせる。


「勇者...!?勇者って、あの伝説の勇者ですかっ!?」


蒼井の口から発された『勇者』と言う単語に、ルビが目を丸くして驚きを

隠せないでいる。


「そう言う事だからさ、ルビさん!ここはシュンに任せて、私達は私達の

仕事をしましょう!」


「え、ええ...!?で、でも...シュン様が勇者―――」


「はい、はい。そこら辺の説明は、後でシュンから聞いてね!」


勇者の事で叫声を上げているルビの腕を、グイッとアミューが引っ張って

強引に屋台の主達の場所へと連れて移動していく。


「そっちの方は、任せたからね......」


チンピラと小競り合いを行っている屋台主達の方へ向かうアミュー達を

僕は信頼の視線で見送った。


「さて...アミュー達に、ああは言ってはみたものの......」


うへぇ...やっぱり相手したくねぇぇ――――っ!!


だって、変態で暗殺者で首斬りだぜ...依頼じゃなかったら、今にでも

ダッシュして、逃げ出したい気分だよ......。


「少年...戦う前に少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「は、はい!なんでしょうか、おじいさん!?」


ダンディーな口調で話してくるファングに、僕は思わず身をビシッと立てて

敬語が口から洩れる。


「さっきの会話がチラッと耳に入ってきたのですが、あなたが...その、

勇者だとか...?それは誠でしょうか?」


「え!あ、はい!補欠ですが、一応勇者をやらせてもらっています!」


デヘヘ...といわんばかりのごますり笑顔で、ファングの問いへ返事を返す。


「くくく...そうですか、勇者...ですか...これは、面白――――なっ!?」


ファングが含み笑いを洩らした瞬間、金剛石の腕輪の効果が発動して

ジャッジメント・サンダーがファングの頭上へ降り注ぐ!


「チィィィィィ―――――――ッ!!」


ファングは咄嗟の判断で、持っている武器をジャッジメント・サンダーへ

放り投げ、ウェイトの間に横へ全力で飛び避ける!


「ハァ...ハァ...な、何なんですか!今の雷は...!?」


ひとつの判断ミスをしても、ジャッジメント・サンダーに殺られていたと思うと、

ファングがいつもの冷静を失って、動揺全開の表情で焦りを洩らす。


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