103話・幾十年振り
「引き受けたからには、キッチリと守ってみせますからね、お姉さん!」
僕はお姉さんを守る様に前へ立つと、安堵させるような笑顔を見せた。
「ありがとう...また、私のボディーガードを引き受けてくれて...」
「と、当然ですよ!お姉さんのキ......ゲフン、ゲフン!お姉さんの
ボディーガードを受けた身としては、このクエストは僕が受けねば...
ですから!」
「そんな理由で、再び私のクエストを受けてくれたのかい、坊やは!
本当に...本当にいい子だね、坊――」
「「「ちょっと、待ったぁぁっ!!」」」
感激の勢いで蒼井に抱きつくこうとしてくるアンジュの前に、
アミュー、ルビ、そしてココが素早く立ちふさがった。
「本当にシュンは...あまり親しくない女性に抱きつこうとしては
いけないんだぞ!」
はい...!?何で、僕が抱きつこうとした事になっているの?
「全く...シュン様は、油断も隙もありませんね...」
え!これ、僕が悪い提なの...!?
「もう...お兄ちゃんは......メッですよ!メッ!」
嗚呼、もうココは可愛いな~♪
「はは、これは悪かった...。でも、坊やはみんなから好かれているね♪」
ニカッと白い歯を光らせて笑い、アンジュが蒼井のモテ度を誉めてくる。
「さて...談笑はここまでにして...もう一度聞くけど、本当にいいのかい?」
神妙な面持ちに切り替わったアンジュが、改めて蒼井に聞いてくる。
「ええ...勿論ですよ!その為にここへ来たんですから!」
「でも、このクエストを受けるって事は...あれと戦う事になるんだよ?」
アンジュが蒼井にもう一度問い、親指をクイッとファングの方に向ける。
「あれ...?あ、何か博識高そうなお爺さんがいるね?」
アンジュの向けた指の方向に視線をおくると、そこにはファングが
立っていた。
「あ、あのお爺さんは、まさか首斬りファングじゃっ!?」
蒼井と一緒にファングの方向へ視線を向けたルビが、目を見開いて
驚いている。
く、首斬りィィッ!?
首斬りって、あれだよね...首をちょんってやっちゃう、あの...!
うわ...なんちゅう、危ない二つ名を持ったじいさんなんだ!?
「あ、あの首斬りファングが、どうしてこんな場所に...!?」
「おや...?あなたは...誰かと思えば、ルビさんじゃありませんか?
幾十年振りのお久しぶりですね...」
ルビの存在にファングが気づくと、口角を上げて微笑をこぼしながら、
スーッと頭を下げ、一礼する。
「ふふ...ガッコ様の所に置いてあったギルド表の中に、ルビと言う名が
記載されているのを見かけましたが...そのギルドの制服を着て、ここに
あなたがいるという事は、あの名は本人だったと言う事ですか...」
上から下へ視線を移動させてルビの着ている制服を目に映し、ファングが
感慨に似た表情を浮かべている。