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第二十二話 一難去ってまた一難

お久しぶりです!


 サラに連れて来られた場所は、大衆食堂兼宿屋をやっている《ミーンツの宿屋》だった。

 宿屋の娘であるサラが商売敵の店に来てもいいのかと思ったのだが、儂に美味い飯を紹介する為だろうと割り切る事にした。

 儂とサラは店員に案内された席に座り、メニューを見る。

 文字は何とか読めるのじゃが、全く理解出来んものばかりだった。

 例えばこの《スラッシュベアのコヴォー添え》なんて、何を添えているのか想像もつかない。

 流石異世界、そもそもスラッシュベアというものがどういう生物なのかもわからない。

 そのままの意味でいいのであれば切り裂く熊なんじゃろうけど、何でどう切り裂くのかが非常に気になる。

 というか、食えるのか?


「リューゲンさん、何を食べる?」


「……ふむ。正直言って儂の故郷とは名称が違うものが多くての。何がいいかさっぱりわからんのじゃ」


「ああ……。じゃあ私のお勧めでいい?」


「それで宜しく頼む」


「わかった! 注文お願いしまーす!」


 サラがてきぱきと注文をしてくれる。

 どんな料理が来るのか期待半分不安半分じゃが、サラがお勧めならばきっと間違いないだろう。

 何せ、あの絶品だった《ボアサンド》を作れる料理技術を持っているのだ。

 間違っても不味い料理を勧めるなんて愚行をする訳がなかろう。


 注文をし終えたサラが、ニコニコしながら儂を見ていた。

 特に敵意が混じった視線ではないが、どうにも値踏みされているような気がしていたたまれない。


「何じゃ、そんなに儂を見て」


「ん? いやね、リューゲンさんって格好いいなって」


「お、おぅ……」


「あはははは、変な反応!」


 変な反応も何も、サラがあまりにも直球だから吃驚したんじゃよ。

 日本の女性の慎ましさに慣れているせいか、非常に困惑してしまう。

 こんなにグイグイと迫られる事なんて、七十年生きてきて一度もない。

 絹代さんの場合は、お互いに奥手だったのでゆっくりと仲良くなって交際を始めた感じじゃったからなぁ。

 でもやられっぱなしも癪だのう。

 どれ、儂もじっと見つめてみようではないか。


「え、えと。リューゲンさん?」


「何じゃ?」


「そ、そんなに見つめて、何かあった?」


「特にはないの。よく見たらサラは可愛いと思ってな」


「なっ!!」


「ぷっ、人の事を言えない反応じゃったぞ」


 別にお世辞を言っている訳ではない。

 サラは普通に可愛い容姿をしていた。

 スタイルも良く、笑顔も素敵な元気一杯の女の子。

 だから本音をそのまま伝えたら、一気に顔を赤くして狼狽しておった。

 くくく、仕返し成功じゃな。

 

 異世界に来てまだそんなに日は経っていないが、身体が若返ったせいか久方ぶりに性欲が沸いたのを実感した。

 その為、サラを性的対象として見ている節はある。

 じゃが付き合いたいかと言ったらそういう訳ではなく、純粋に良い女として見ているだけだった。

 今のところは誰かと付き合いたいとかそういう願望はない。

 最優先は、強い武人と闘いたいんじゃ。

 交際は二の次で、一夜限りでもいいと思っている程度だった。

 まぁサラとそういう関係になるかどうかはわからんが、今は彼女とのこの会瀬を楽しもうと思う。


 注文していた料理が届き、二人で一緒に食べながら雑談を楽しむ。

 異性とこんな時間を過ごすのはいつぶりじゃろうか。

 主にサラが話題を作ってくれる。

 昨日はこんなお客さんがいたとか、近くで綺麗な花を見つけたとか。

 確かにこの異世界は娯楽が少ないが、見るもの全てが初めてな儂にとっては、サラのそんな他愛のない話も新鮮で楽しかった。

 喜怒哀楽を隠す事なく表情で表現するので、ころころ表情が変わる様を見ているだけで楽しかった。

 まるで儂の中にある修羅と言っても過言ではない闘争心が、清められていくかのようだった。

 儂も昔話を披露する。

 一応この世界の山奥でひっそり暮らしていた世捨て人という設定なので、それが崩れない程度の過去話じゃが。

 だが儂の昔話は基本的に血生臭い内容ばかり。

 故にさらにそこまで酷くない話をチョイスして話していたのだが、サラはかなり興味を示したように頷いて聞いてくれていた。

 流石宿屋で働いているだけあって、相手の話を上手に聞く術が身に付いているようじゃ。

 宿屋の主と血は繋がっていないが、大切に育てて来た事ははっきりとわかる。


 確かに儂が求めているのは戦いじゃが、たまにはこういう平和な一時も悪くない。

 儂はサラの話に耳を傾けながら、穏やかな気持ちで出された水を飲む。


(ふーむ、心が洗われていく。心地よい時間じゃな)


 すると、店の扉が荒々しく開けられる。

 店内は一気にしんと静まり返った。

 儂は気にせず水を飲む。


「おい、わかってんぞ! 昨日うちの大事な弟分であるガーヴを痛め付けてくれたガキがこの店にいることをな!!」


 誰じゃ、ガーヴって。

 確か儂は昨日誰かを叩きのめしたが、ガーヴって人間ではなかった気がする。

 それに儂は餓鬼ではないからなぁ。

 となると、儂じゃないだろうな。

 気にしないでおこう。


「いたぞ、そこの黒髪!! てめぇの事だよ!!」


 全く、この町はトラブルで溢れ返っておるな。

 今わめき散らしている男は、どうやら昨日儂が遊んでやったブ男の兄貴分らしかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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