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@hiyokurenrisks
ブクマやら感想やらアズレンの話とかFGOの話をしてもらえると私は嬉しい
稲穂が風に揺られ黄金の波を作る横で少年少女はおにごっこをしていた。
「バリアー!」
「バリアとかねーから普通にお前オニな」
……
「あ、まって靴脱げたからタンマ!」
「わざと脱いだでしょ!」
先程バリアを使っていた赤髪の少年がまたも捕まりそうになるとなんとかオニにならないようにと小賢しい手を使って頭をはたかれた。
「痛いってねーちゃん叩かなくたっていーだろー」
「あんたがズルばっかりしようとするからでしょ!そんな事ばかりしてると今日のご飯のおかず分けてあげないから!」
「ちょ!勘弁してくれよ〜」
綺麗な金髪を揺らしながら頬を膨らましてツンツンしている少女に縋るように謝る少年、それを見て笑う他の子たち、稲穂の海に囲まれたのどかで優しい風景…
その世界は穏やかで争いも無く、それ故に技術の発展も無かったためただ自分たちの食べるものを作り生活する。とりわけ美しい集落だった…
それが地獄へと変わるのに時間はいらない…黒ずくめの人影が2〜3人で1人を捕まえては飴玉のような物を無理やり飲ませては次の人に移る。
飴玉のような何か…精霊、そしてそれと融合するための術式と痛みに我を忘れれば自我を支配する術式を合わせたそれを飲まされた人は苦しみ始める。
合わなかった人は体の一部又は全身から融合させられた精霊の力が漏れてしまう。
どうしようもないほどに理不尽なそれは用意できた精霊の数、約100個を消費しきるまで続いた。
経過を見るために分かれて見張りをしている黒ずくめの一人が凍り付く一人…また一人と氷の柱へと変えられて行く。
高台から全体を俯瞰で見渡していたレイガスがそれに気づくと左手をあげる
するとすぐに人影が現れる
「あそこに適合者が現れた、さっさともってこい」
「はっ!」
矜持と同じく墨のように黒く染まった髪の少女が又も一瞬のうちに姿を消す、数分後にその背に大柄な男を抱えた少女が高台へと戻った時、全ての人が反応を終え人の姿を完全に保てた適合者は一人だけだとわかるとレイガスの指揮で黒ずくめ達は引き上げて行く。
「痛みに苦しみ…ずっと待っていたんだ俺の番を!あいつらの苦しみ!貰っていいんだよな!」
「ああ、こちらも精霊の回収を手伝ってもらっているからな」
獣のような逆関節に紫の肌、ツノを日本持つ悪魔とレイガスの会話を最後にその地は更なる地獄と化す。
「ああ、こいつが簡単な命令を送るためのものさ」
そう言ってレイガスが渡したのはマイク、本来ならそれ単体で機能するものでは無いが声の認識と拡散ならレイガスにとってイメージできたのはこれでその機構まで含めて頭に出来上がったのだから仕方がない。
無数にある世界の一つで起こった悲劇は未だ比連に認識されてすらいない…はずだった。
レイガスの胸から剣が生えている、これからゆっくりと負のエネルギーを回収して強くなろうとしていた悪魔は首が宙を待っている…
レイガスが最後に見たのは魔力弾の一発で、輝く光の刃の一太刀でその姿を人に戻して行く人々の姿をだった…
報告にあったレイガスに剣聖が剣を突き刺すと同時に管制室では不眠続きの職員達の歓喜の声が上がっていた、誰もが一刻も早く悲劇を終わらせようと努力して睡眠時間を削りに削った成果が早々に現れたからだ。
しかし…
何処かの研究所の中でレイガスが呟く
「何だってんだよ急に殺しやがって…ストックは貴重だっていうのによ、てかあいつら舐めてたわ。完成形も無いのに特効薬作るなんて流石にバケモンだろ…あークソッタレ!帰ってきてるなプロトA!」
その苛立ちが込められた声に反応したのは例の如く黒髪の少女
「ここに」
「イラついてたまらない、跪け」
レイガスはその手に炎の鞭を取り出し少女を叩き続ける。
少女は何も言わずにただ耐えるしかし
「救ってやるからな」
ネルパという町で悪魔の接待と比連の監視網の実験をしていた時に出会った矜持の言葉が頭をよぎる度に顔を顰める。
確証の無い希望は胸を締め付けるだけだ、それならいっそ消えて欲しいと願うが脳裏に焼き付いた姿が離れない。
矜持が真剣だったからこそ少女はどこまでも希望を捨てられなかった。
「矜持、こんな感じでどうだ?」
「ああ、やっぱりレントは飲み込みが早いな」
「お前の教え方がいいからだよ」
トレーニングルームにて連携に必要…というよりもこれから先ずっとあれば便利な戦い方を矜持はレントに教えていた。
それはルイスとレントの戦いの時にヒントを与えたもので強化をアホみたいにかけて攻略するなんて想定していなかった矜持が教える常識的で便利な戦い方。
「にしてもそれは本当に必要なのか?役割分担ができていれば必要無いだろうそんなもの」
そう、常識の範囲内ではあるが誰もわざわざ使おうとはしない。本来比連職員というのは複数人で行動するためできない事よりもできる事を伸ばすという方式を取る者が圧倒的に多いからだ。
「いざという時これができるってだけでかなり助かるからオススメだぞ?」
「いや、俺は遠慮しておく、使っている技術そのものは普通だがそれを当たり前のように使うお前たちの気がしれん」
「「えー、だってこっちの方がよくね?」」
「まあ今回の戦いの上で便利な事は認めよう」
彼らは五君子戦へ向けて着実に歩を進めていた。
そしてレントがいるおかげか、それとも矜持と少女に縁ができたからか波乱は着実に迫っていた。