回想:レントと矜持の出会い
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@hiyokurenrisks
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五君子戦へ向けての訓練の休憩中、ルイスの言葉が皮切りだった。
「おいレント、貴様らがどの様に出会ったのか興味が湧いた、話せ」
普段そんな事を絶対に言わなそうなルイスの口からそんなことを言われて驚く
「え、ルイスが興味を持つなんて珍しいな!」
「ほんとに、そういうの興味ないと思ってた」
お前から貴様に変わっているあたり俺に心を開き始めたのかもしれないルイスは分かりにくいが根が悪いやつではないため…まあだからと言ってこんな態度を取るためいい奴でもないのだが慣れた俺とエリアスは物怖じせずに思ったことを口にした。
「ただ少し興味が湧いたというだけだ、そこの魔法に恵まれなかった男の態度が脳筋とそれ以外で明らかに違うからな」
まだルイスに苦手意識のあるクリスのために間に入り2人してクリスの契約精霊であるフィンとエリアスの契約精霊であるシンを可愛がっている矜持に目をやる。
ちなみに矜持自身の精霊であるラティファは魂の方で休んでいるらしく出てきていない。
「あー、まあなんていうか俺たちは出会いがあれでな。あいつはたぶん俺に対してはすごい雑な感じなんだと思う」
「チームを組む前に面識があったということか?」
「と言ってもほんの数日だけどな、あれは入学してすぐだったかな」
本当にアホみたいにどうでも良くて大したことは無いけれどそれでも俺たちが入学してすぐに親友とまで呼べるようになった事を思い出す。
初めて見た時、遠目から見たその戦い方であいつとは合わなさそうだと思った。
「なんだよ、相手の行動全部無駄みたいに一歩も動かないで魔道具に頼りやがって」
対戦相手が踏み出したところへワイヤーを引っ掛け転ばせ武器を奪い簀巻きにする、この時俺はそれが簡単にできると思っていた。
実際には相手の動きを読み切る力量がある上で魔力と同じように動かせる二本のワイヤーを手足の様に扱うという技術の凄さがわかっていなかった。
だからそんなやつが周りからちやほやされているのを見てもあまりいい気がしなかった。
「おいレント、よそ見してねーでそろそろ打ち合いしようぜ」
「おう」
どこか嫉妬があったのかもしれない。散々鍛えてるのに筋肉がつかない自分の体と筋肉がよくついているあいつの身体、それでも力で負ける気はしなかったが剣士なんていくらでもいる中、軒並み力の強い獣人の中で自分が特に優れているなんて思っていなかったし獣の特性が出ていないため特殊な働きもできない自分への焦りが、それでも師匠から教わった剣だけで戦おうと努力しているのにあんな澄まし顔で戦うやつに劣っているかもしれないのがたまらなく嫌だった。
でもその認識はすぐに改められる事になる。
それは家の外で素振りをしていた時の事だった。
家の中にいれば聞こえないくらいの悲鳴が一瞬聞こえた。
声が聞こえた方向に向かい足を走らせたがなかなか異常が見つからなかった、それでも今この瞬間もこの辺りで苦しんでいる人がいるはずだと思って走り続けた…そして見つけた。
上下共に黒い服をした男、そいつの足元には簀巻きにされたおそらく人、そしてそいつの腕の中で女性が泣いていた。
強姦魔…その存在だけで人々の不安を煽るクズ
「今すぐその人から離れろ!」
それを認識した時には叫び駆け出していた。
友達に妹、周りに女性がいつか被害を受けるかもしれないと思うと決して許せないその存在に向けて剣を振るう、比連としては相手が抵抗して自身が危険な場合殺害してもいいがその勇気もまだ無いし被害者に血を見せたく無かった俺は剣の腹で殴りかかっていた。
「違う違う!何もしてない!っていうか「うるせぇ!」
言い訳をしながらも俺の剣の腹に手を当てて見事に円を描くようにその力を流して一歩も動かず防いでみせたその男は
「士道…てめぇ!」
士道矜持、いけ好かないと思っていたやつだった。
「魔道具に頼ってていけ好かないと思ってたらその変な魔道具はそんな目的だったのか!」
そんな奴が比連校にいると思うと許せなかった。
再び振りかぶり立ち向かおうとしたら足が動かせなくてこけた。奴のワイヤーだ。
「話聞けよ、俺は「許されると思うな!今に見てろ!必ずお前は捕らえられ…ブフォ!」
「さっきから被せすぎなんだよ話聞けや!」
胸ぐらを掴まれ立たされたと思ったら殴られた、それで一瞬頭が真っ白になったためか急速に頭が冴える。
「いいか、俺は強姦魔からさっきあの人を助けたの、そしたら安心してあの人が泣き出したから慰めてた、そこにお前がきた、わかる?てかさっきの攻撃俺が避けてたら彼女怪我してたかもしれないだろ、その辺わかってるか?なあおい」
ものすごい誤解をしていた…顔が青ざめてくる。
「それから俺が変な魔道具に頼ってる?これ使いこなすのに苦労したし俺にとっては大切な物なんだ、まずは状況確認、それから相手を刺激するような事言うな」
口調はそこまで乱れていないけれど確かな怒りを感じた、それでもって立ち会った女性の安全のために俺の攻撃を受け流した事から実力差もわかる。
「すいませんでした…」
「おう、俺の方も殴って悪かった…まあ、散々言った後であれだけどお前も悲鳴聞こえてきたんだろ?たぶん外で素振りでもしてる時に。そういう奴は好きだからこれから仲良くしてもらえると助かる」
そう、そもそも壁に遮られていては聞こえづらく聞こえても一瞬のため気にも留めないような悲鳴だった。それに駆けつけているこいつも正義感が強くてきっと先ほどまでも鍛えていたのかもしれない、印象が変わった。
「許してくれんの!?まじ!?よろしく!」
既に拘束を解かれていたため思いっきり矜持の体を揺さぶった。
「おう、よろしくよろしく!わかったから!ほらあの人めっちゃ置いてかれてるから!先事件の処理な!」
「おう!わかったぜ!矜持!」
「あ、ところで名前聞いてもいい?」
「レント・シャルカン!レントって呼んでくれ!」
「んでこの後エリアスが連れてきたチームメイトがたまたま矜持で嬉しくてウザ絡みしてたらいつの間にか今の関係になってた」
「昔からレントは気づいたら仲良くなってるというか遠慮ができなくなるとこあるから」
話し終えたところでルイスが凄く嫌そうな顔をしている。
「貴様…面倒くさすぎるだろう…魔法だけじゃなく貴様に出会ったこともあそこの腑抜けてる奴には同情するな」
ルイスが腑抜けてると表現したようにすごくゆるっとした空気を醸し出す矜持の方を見る。
フィンと遊んでいる姿は本当に幸せそうだ。
あいつがどう思っているかは置いといて俺は出会えてよかったと思う、きっとあいつとの出会いのおかげで俺は成長したはずだから。
ネコ科動物の可愛さは異常