表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/134

無問題

ツイッター


@hiyokurenrisks


気軽に絡んでくれると嬉しいです


ブクマ感想お待ちしております



どうやって話しかけたものか悩む、俺自身が捉えた泣いている女性に対しての話しかけ方なんてわかりはしないが助けると決めたので何も考えずに吊り上げた状態から下ろし話しかける。


「なぜ紡を襲ったのか、事情を聞かせてもらえますか?」


既に彼女を拘束するものなど存在しないというのに微動だにもしない、とは違う、ただ俯き涙を流すばかりで何もしたくないという様子だ。


「顔を上げてください、俺はあなたも救けるつもりです」


彼女の肩を掴んでそう言った瞬間周りの空気が少し変わる、目の前の彼女も周りに残っていた警備スタッフも何を言っているんだという風な空気感を漂わせる。

それが当たり前だと思うしそういう反応が来ると思っていたから意外だったのは紡は驚かなかったこと、仕事のことについて話したとは言っても既にここまで理解があるとは思っていなかった。


「何が目的ですか?」


やっと話をする気になってくれた目の前の女性は警戒心を露わにこちらを見てくる、体目当てとでも勘違いされているのかもしれない、確かに彼女は美人だ、健康的な褐色の肌に黒く長い髪は後ろで綺麗に大きな三つ編みにされている。そして服がはち切れんばかりの大きな胸、この状況で勘違いするのが当然なほどに今まで言い寄られた事が多かったんだろう。


「いえ、何が目的でも構いませんね…既に私には自由などありませんし、体でもなんでも捧げます、ですから救けてくれるというのなら私の家族を…救けてください…私にはできなかったんです…」


今にも消えてしまうんじゃないかというほどの儚さを持った彼女のその言葉でその場の誰もがやりたくてやったことではないと理解する。そして俺は…


「任せてくれ、俺の持てる全てを尽くそう。報酬は…求めないのがヒーローだ」


今この瞬間からこの瞬間から彼女のヒーローになると第三段階まで一気に制服を展開する。


誰もが知るヒーローの証に彼女の思いをしかと背負って



目の前で行われる矜持と女性のやり取りは話に聞いていた通りだったから展開は読めていた、刺されそうになった時一瞬見えた彼女の瞳から同じように感情を読み取っていたから。

だから警備スタッフが動揺して矜持に色情魔を見るかのような視線を見せた時も俺は取り乱さずにいれた、だが矜持が白い制服に、赤いマントに身を包んだその時には誰もが目を奪われた。


雄々しく、勇壮に、悠然と立つその姿にその場にいた誰もが息を飲む。

それはもう大丈夫の証、ヒーローそのものだった。


「それじゃとりあえず誰にやらされたのか、家族はどこに囚われているのか、あなたにはできなかったって事は救出を試みたのよね?どんな仕掛けがあったのか、諸々話してもらおうかしら」


誰もがというのには語弊があった、彼女は、矜持の相棒のクオリアさんだけは当たり前のようにその空間に混ざっていた。彼らの出す空気からわかる、自分とは違うと。彼らはそういう世界で生きる人なのだと。


「そのナイフの術式からみると相手は結構な大物か組織になるわよ、少し傷つけたら紡君が死ぬようにできてる。ストーカーの成果とでも言えばいいのかしら、紡君を殺すことに特化してるわね、それ」


ぞくりと体が震える、自分の死が直近まで迫っていたのだと改めて思い知らされる。


「てことは元を叩かないとこの術のデータ残るとやばいな、さっさと潰さないと…」


足が震える、生死について語る彼らのテンポについていけない。

二人が女性から情報を聴き出しながら誰かと通信を繋いでいるのが聞こえているのに少しも頭に入らない恐怖が心を支配する。


「安心しろよ紡、ちゃんと解決してくるから」


先ほどまで恐怖で何も耳に届かず考えられなかった頭が矜持が近づいてくることを認識してあまつさえその言葉が胸にストンと落ちてすこしだけ落ち着きを取り戻せた。


「今、『安定』つかった?」


「少しだけな」


ニヤリと笑う矜持の態度は深刻ですら無くてそれがこちらにも安心をくれる。


「ちょっと遅くなるけど今日中にはなんとかできそうな雰囲気だった、やっぱり攻める側の方が楽でいいな!今敵側のセキュリティシステムを調べてるところだからそれが終わったら乗り込んでくる」


写真で散々自慢された姉と妹に面目が立つと喜ぶ矜持に…一緒に落ち着いてきたからかどうしても頼みたい事ができた。足手まといだとわかっているけれど


「俺も連れて行ってくれないか?」


その先、離れてしまうのが怖いとは言い出せなかったが


「そうだな…一緒にいる方が安全て考えもできるし言ってた歌作りのためなら仕方ない!」


その程度の負担なんて全くもって問題ないと言うように一切不安を見せずに了承してくれた。



イオリ・カーバンは目の前の光景が…今の雰囲気が信じられない。


まず速力強化という超限定的な先天魔法を持つためこの距離なら確実に仕留められると思っていた相手を仕留められなかったところから予定外だった、成功して解放されるはずだった家族の事を思い涙を流し自らの運命を呪ったはずだった。


そしてその殺害対象もこのナイフにある術式のせいで遠からず死ぬ運命であると絶望するはずだったのに


赤いマントの…前時代的ヒーローの格好をした1人の男によってこの場の空気は決して暗くない。


もう大丈夫という安心感を与えられてしまった、だから…


先ほどとは違う安心の涙が頬を伝った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ