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紡の力

ツイッター


@hiyokurenrisks


で活動してます、絡んでもらえると嬉しいです。



レントの戦いから少し経った後もストーカーは一切現れない、紡本人も嫌な視線などを感じないと言っている。


「これは相手が相当有能なストーカーで紡が比連に行った時点で引いたって見るんだけど」


「私もそうだと思う、それでもし何かアクションを起こすとすれば…」


「変装も一切せず人前にでる今日のライブって事で、今日が終われば多分適当に力量さげてつけられるはずだから頑張ろうか」


もうすっかり慣れたお互いのいる朝、それが今日で終わる事にもあまり感慨を持たずに2人は一日を始める。隣で起きた紡は2人と違い何度経験しても緊張するライブに臨む心を作っていた。



ライブ会場までも問題なく送り届けられる、ここから先は立ち回りにも気をつけなければならない。何かあったとしても出来れば2人の正体を隠したまま対応したいがどうしようも無ければ護衛対象が優先だ。


もっとも一般人どころか相当の実力者でも無ければ2人の対応できないレベルで行動する事など出来ないが護衛系はいくら警戒してもしすぎという事は無く、その上で心に余裕を持たなければ視野と思考が狭まる。その兼ね合いが慣れるまでは難しいものだ。


あいもかわらずクオリアは少し遠めの観客席で、力仕事を手伝いながら矜持は近くでという配置になるが実際、間近と俯瞰でそれぞれ見渡せる事と戦闘スタイル的にそれがハマっているのだから仕方ない、観客側の安全確保にも対応できる配置と言える。


そこまで決まっていて今の状態はと言うと…紡はトイレにいた。


「紡、大丈夫か?もう魔法で何とかしてやろうか?」


安定の魔法を使えば精神的なものからくる腹痛ならなんとかできる、さすがに便がでかすぎるなどの要因なら厳しいものがあるが


「いや…正直そうしたい気持ちもあるんだけどね…今矜持に頼ると次も頼りたくなっちゃうだろ?いつもいるわけじゃないのに」


「だとしても何されるかわからないって状態のライブなんて例外中の例外だろ」


紡がここまで追い込まれる理由は件のストーカーだ、比連に相談するまでの間に相当ストレスを溜め込んでいたせいでトラウマになっている節がある。だから矜持は魔法を使った。


「ストーカーのせいで来る腹痛なら俺が護衛対象を守っても問題ないだろ?」


「そう…かもな、今回はお言葉に甘えとくよ」


矜持がかけたのはほんの少しだけ、緩くだが紡にとっては十分効果があったようで少ししてぐんぐんと良くなった腹痛に完全に別れを告げてライブ本番へと挑んで行った。


「戦闘力は一般人だとしても精神はやっぱり凄いな…俺も紡も一芸特化な事に変わりはないか」


やはり紡は自分とは違う世界で戦う凄い人間だと矜持は思いながらその後を追いかけた。



「みんな!今日はよろしくー!」


ライブが始まれば紡の雰囲気がガラリと変わる、今まで普通に話していた紡はあまりにも輝いていて「ああ…彼は舞台の上の人なのだ」とその場にいた全員に思わせる程の輝きを放つ、そしてそれは一分一秒毎に強さを増す。


紡の先天魔法だ、印を置いて囲った範囲内で自分の楽しいと思う気持ちを伝播させそれを受け取った人たちが感じた楽しいという気持ちが紡に集まり伝播させるためのエネルギーになる。


その無限ループで紡はどこまでもステージで輝くことができる。


護衛の矜持ですら気を抜けば惹きつけられてしまうほど見事なステージだった。

そして何も起こらずにライブは終わりを告げた。



「すっげーな紡!あんだけ惹き込まれるの始めてみたぞ!」


「まあな、あれが俺の仕事だから当然だろ?」


ライブから物販までのもろもろが終わって少し気が抜けたのか朗らかに紡が答える、これから連続で何日かステージに立つらしいが今日までの感じからして比連職員が付いているというだけで問題ないだろう。


コンコンコンとドアがノックされる


「車の準備できたみたいだな、俺の最後の護衛だから安心して帰ろうぜ」


「はやいな!もうちょっと引き継ぎとかでついてたりしないの!?」


紡の気持ちもよくわかる、そっちの方が正しいのだろうが


「俺たちは今学生の上にかなり上の方の階級だからさ、なんかあった時の対応のためにできる限りフリーになっといたほうがいいんだよ」


王族の護衛までしたと言っていたことを紡は思い出す、大は小を兼ねるからここで問題なく仕事している矜持たちだが彼らにしかできない仕事が回ってきたときのために手を開けておきたいのは組織として当然だ。


「そういう事なら仕方ないな…しっかり守ってもらうよ」


そう言って2人が裏口から出て行き出待ちのファンをスタッフが抑える前を紡が通る時、ファンのためにと少し距離を開けていた矜持の隙をつくようにスタッフの一人を切りつけ飛び出したナイフをもった女が…あっけなくワイヤーで吊るされた。


「最後の最後で…まあおれがいる間で良かったといえばよかったのかな…」


何でもない風に言った矜持の言葉で落ち着きを取り戻したスタッフ達によって出待ちしていた全てのファンが帰らされ切られたスタッフの手当てにすぐにクオリアがやってきて後には当事者だけが残された。


「タイミングさんもちょっと機嫌悪くないか…今日は帰れるって言ってたのに…」


妹と姉に非難されるだろう未来の事を思いながらも矜持は思考を切り替えた、仙術で見えるのはその感情が正か負かしかない、だから矜持はただ目で判断した、女の目に浮かんでいたのは紡への憎しみではなく他の何かへの恐怖と焦りだったと、ナイフに刻まれた術式に何かがあると。


だから…項垂(うなだ)れて涙を流す彼女を救うんだと心に決めた。



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