魔法と魔道具
気→仙術に変更
名前にそれっぽさが出ると嬉しいです。
序盤なんで説明多めですいません。
姉さんたちとの約束の日からクオリアさんとの仕事の日までしっかりと調整をして当日を迎えた。
ニート精霊ともいつも通り夢の中でどんぱちやって万全の状態だ、いつもよりきついそれをニート精霊も快く受けてくれて助かった。
「こんばんは、クオリアさん」
「ええ、こんばんは矜持」
待ち合わせしていた比連本部の一室で挨拶を交わす。
「早速だけど今回の仕事の確認をするわね、新しい情報は何も無いから前と変わらない上に矜持がすることはいつもと同じ制圧よ、相手は幸福の徒、やばいタイプの宗教団体よ、今回は水道に毒を混ぜる計画をたててることがわかったから踏み込めるようになったの」
クオリアさんは地図を広げて指を指す
「この建物に集まるんだけど地下も含めて逃走経路が多いの、これを私が塞ぐからそれから突入して制圧、これまで手引きしていたのは比連職員、階級は金羽だけど手下もいるかもしれないから一応気をつけてね、何か質問はある?」
「ないです」
「じゃ、行くわよ」
前の打ち合わせでした以上の情報はないので確認作業は一瞬、すぐに移動を始める。
神社や寺の意匠を混ぜた様な建物の前まで来るとクオリアさんが比連職員用の腕輪ともう一つ自前の腕輪に魔力を流す。
この腕輪は魔道具と呼ばれる魔力を流すことで特定の魔法を使うことができるものだ。
腕輪に魔力を流すことで変わるのは服装、一瞬のうちに服装が黒のノースリーブにタイトスカートに変わり、腰にはベルト、左右にホルスターがありそれぞれに拳銃が刺さっている。
そしてクオリアが短く詠唱する。
『塞げ、氷よ』
その瞬間、矜持とクオリア、そして建物を囲む氷が現れていた。
「さ、行きましょ」
なんでもないかのようにクオリアはそう言うがやっている事は尋常じゃない。
魔法は頭で組み立てた式を魔力で世界に上書きする事でその現象を確立することだ。
そして詠唱は筆算やメモのようなもの、増えすぎた情報を口に出し世界に書き出しておきさらに計算を進めることができる。
魔道具はその式を最初から用意しておき魔力を込めるだけで何も計算せずとも魔法が使える。
また魔法を使うのに必要な魔力は精神力に左右されるのだが魔法を使うのに必要なのは魔力を流すための道、神経、血管のように張り巡らされた魔力経の太さが鍵になる。
そもそもこれが無ければ魔法を使う事が出来ず、それを補う意味でも魔力を事前に溜めておくタイプの魔道具も人気がある。
「クオリアさん相変わらずとんでもない事しますよね、俺なんて氷作るのもできませんよ」
「私は魔法専門だからね、なんなら詠唱しなくても今のくらいならできるわよ?面倒だからしなかったけど」
矜持の記憶の中のクオリアでは無詠唱で先ほどの魔法を使うことはできなかった。
当たり前だが彼女も3年前より成長しているのだ。
「じゃあ今度は俺の番ですね」
そう言った矜持の手には剣の形をした魔力の塊がある。
魔道具を使い剣を作るのではなくただの魔力の剣、本来なら魔力の無駄使いなのだが…
「うわー、また密度上がってるじゃない」
「それだけじゃないですよ、主従関係が結べたんで夢を司る闇精霊こと俺のニート精霊の力を使ったらですね」
魔力の刀を消したあと矜持の胸のあたりから黒い霧の様なものが吹き出てまたも刀を形作る。
そうして黒い刀を見せて矜持は言う。
「今回は夢の力をもらったんでこれで頭を斬ったり刺したり致命傷だと誤認させれば相手は傷つく代わりに寝ます」
「それはいいわね、今日は私の銃使う機会がだいぶ減りそうで」
そう言うクオリアの銃を持ってこちらを見る姿を見て矜持は思い出す。
「あ、俺も制服展開しないと」
そう言って矜持は腕輪に魔力を流すとその姿は黒の長袖長ズボンになる。
「うーん、ひさびさに矜持の第三段階見たかったんだけど…部分展開してくれない?あ、携帯は預かるわ」
「クオリアさんだって第一段階じゃないですか、必要になれば第三段階にしますよ。お願いします」
2人の言う段階とは制服の段階のことだ。
第一段階は夏服に向いた黒地の薄着
第二段階はそれに上は白のジャケットがつき下は黒の布を裏地にし白の表地が追加される、これが職員の正装となる。
そして第三段階は、それぞれが戦闘のために個別にカスタマイズしている。
それはプロテクターがついたり関節部分にサポーターがついたりと些細なもので本格的な装備はさらに追加で魔道具を使わなければならない。
クオリアの言う部分展開とは必要な部分だけを展開するものでクオリアは逆に袖を展開しない選択をしたのでノースリーブである。
最終的に戦闘用の服になるため第一段階の素材もかなり丈夫にはできているがこの2人服装は適切ではない…普通なら。
今回の仕事、そしてこの2人が組んでいるという状況においてこれは油断でもなんでもなく、これで十分なのだ。
そして2人はごく自然に建物に乗り込み、ごく自然に互いの望む動きをして、ごく自然に制圧していく。
矜持は素早く頭を斬っていき、クオリアは二丁の拳銃から麻痺の性質を持たせた魔力を打ち出し、そうして気絶させた相手をクオリアが魔道具から作る縄でどんどんと縛ってしらみつぶしに少しずつ進む。
「この建物でかい上に人が多くて縛るのが面倒ですね」
「ほんとにね、ここから矜持が戦い引き受けてくれるなら縛るのは私がやるわよ?」
「じゃあそれでいきましょうか」
「ありがと」
さっきまでわざわざ手作業で縛っていたというのにクオリアは沢山の縄をだして魔法でどんどん縛っていった。
「うん、やっぱり楽ね、これ」
「なんで最初からしてくれなかったんですか!」
「割と頭が疲れるから、矜持以外とじゃ少ししんどいって言ってたじゃない。それに矜持と一緒にいるなら多少時間がかかってもいいかなって」
「ぐ…ずるい言い方ですね」
「本心よ」
「じゃあさっさと終わらせて普通に話をしましょう」
照れた顔を隠すように前に向き直った矜持が走っていく。10分後には全てが終わっていた。
クオリアが比連に連絡を入れて護送車を待つ。
「ねえ矜持、今日って特に仙術使ってなかったわよね?」
「はい、そうですけど」
「学校じゃもっと抑えた方がいいかもしれないわよ?なんか魔道具とか買わない?いいとこ紹介するわよ?」
「うーん、でも俺がわざわざ魔力だけで武器作ってるのって槍とか拳とか刀とかハンマーとか師匠に習ったやつが一通り作れるからで魔道具になると融通がきかないじゃないですか」
「だーかーらーよ!仙術使わなくてもあんたは強いの!虎徹さんも感覚が狂ってるのよ!現役学生でうまく隠してる先輩の言うことは聞いときなさい」
「そういう事なら…じゃあ見繕ってもらえますか?」
「ええ、学校がもうすぐ始まるからその前に見にいくわよ、暇な日ってある?」
「だいたい暇ですよ?それこそ明日でも」
「そう、じゃあ明日にでも行きましょうか、時間は昼からね?せっかく家族に会えたんだからご飯は家でとってきたらいいわ、何かあればまた連絡するわ」
そう言ってクオリアが携帯を返す、それに示し合わせたかの様に護送車がきて2人はそこで解散した。