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突入4

少し駆け足気味の展開ですがこの後は少しほのぼのを増やせたらなと思ってます。



どれだけ魔法を放っても一向に届かない、戦闘が本業でないにしても研究者として培った頭脳で放つ魔法は決して弱くないと言うのに、それが束になってかかっているのに(ことごと)くが無駄になって行く。


「なんなんだあの化け物共は!レイガス様、レイガス様に報告して検体を使え!実験だ!」


若干の錯乱状態になりながら研究所に近かった者たちが逃げるように走っていった、それもそうだろう、悪夢だ、ただ話しているだけのガキ二人に対してどれだけ魔法を放とうが決して通らないのだから。


何よりの恐怖はその光景があまりに普通だからか…気をしっかり持たなければ警戒できないのだ、明らかに敵対しているというのに警戒しきれないなんて異常は恐怖でしかない、そしてその恐怖の元がその手に刀を現出し立ち上がった。


その姿は先程と刀しか変わりないというのに、警戒できない事への恐怖ではなく、ただただその存在への恐怖が湧き上がる…実際の悪魔を見たことがあるがそれ以上に悪魔のように思える化物が立っていた。



レントの悔しさや怒りの凄まじさが右手に握った刀から伝わってくる、これだけ怒る事ができるほどヒナという女の子と密度の濃い時間を過ごしたのだろう、それだけの思いを抱けるだけの下地(やさしさ)を育んできたんだろう、その上で事件の核心であるヒナという子に出会えたレントはやはり俺が憧れた…今も憧れ続けるヒーローの素質があるのだろう。


常に核心に触れる、物語の中心にいれるような存在なのだと思う。


--俺と違って…


それがどうした、だからと言って俺が恵まれていない訳ではない。寧ろ人に恵まれて来た人生だ!

辛いこともあったが環境に恵まれた人生だ!

だからこそそれを侵し学院生の心を蝕んだ彼らを許してはおけない!

呼吸するように無意識で使う仙術が怒りに呼応し周囲の風が荒れる。


「お前たちの罪は本部で公平に裁き償ってもらう、だからとりあえず…苦しんで眠れ」


数は15、固まってくれているので簡単に終わらせられる、刀を両手で握る。


慣れ親しんだ形、手の内(にぎり)の感覚にも問題はない。正眼に構えて50mの距離を一息で詰める。

あまりにも長距離な一挙手一投足の間合い、大量の魔法の残滓のおかげでいくらでも肉体を強化できる。

その力でもってレントの思いを15人に突きつけた。


正面打ち、抜き胴、基礎にして奥義である一分のブレもないその一振り一振りが15人の信者たちを悪夢に堕とすのに10秒も必要としなかった。



不思議な光景だった、頭や胸を斬られた信者たちは血を流さずに倒れこむだけだ、それでいてそれを行なった矜持の姿は…

綺麗だった、筋肉による厚みがある矜持の姿はかっこいいという印象だった、拳でエレナと戦う姿もかっこいいとかであったはずだ、

でもあいつが刀を振るう姿は、刀の軌跡はあまりに綺麗だった。


幸福の徒の奴らを斬り伏せた矜持に、何か話しかけようとした。何を話したいか纏まっていないがまずは礼を言いたかった。


だがまだ戦いは終わっていなかった。当たり前だ、施設があるのだからまだ人員がいて当然だったんだ。


何かを避ける素振りをした矜持の胸から血が噴き出した。

何も無かった筈の空間から人影が現れる、反りの少ない小さな刀…短刀を携えた、血に染まった少女だった。


「うぅむ…いかに姿を消そうと実態がある限り血を浴びては意味が無いな…一撃で殺せば問題ないが一応改善点としておこうか、プロトA罰だ、来い」


「はっ」


施設から出てきた金髪をオールバックにした司祭のようにも死神のようにもみえる黒衣の男が少女を呼ぶ、短く返事を返した少女は矜持のもとを離れて男の前に跪き…炎の鞭で打たれ始めた。


「矜持!動かないで、」


クオリアさんが矜持を抱きとめ傷口に手をかざして魔法による治療を行なっている。

悠里さんは銃口をしっかりと男に向けて発砲準備をしている、俺だけがこの急展開についていけないでいた。


「ゴボッァグッ…」


矜持が口から血を吹き出しながら立ち上がろうとしている、明らかに戦える状態じゃないのに敵がいるから…

それに気づきやっと駆け出し矜持の前に立ち剣を構えたが


「どけ」


底冷えする様な声と共に押しのけられた。

振り返るとそこに声の主はいない、首を振りながら前方を指差すクオリアさんだけがいて、再び振り返り前方に向き直ると…オールバックの男のいた位置で先ほどの少女と、そしてさらに追加された2人の子どもと戦う矜持の姿があった。


「なぜ動ける!そいつの使う毒は象ですら即死させるんだぞ!」


「それがどうした!もともと許す気なんてさらさら無かったが…お前らは!お前らは必ず潰す!」


狂気すら感じる矜持の姿にオールバックの男は怯みながらも四人がかりで応戦するが近接戦では三人相手でも矜持は引かず、魔法を放とうにも相殺されすぐに矜持に距離を詰められる。


「プ…プロトABC撤退だ!ダニアン!」


オールバックの男が叫ぶとその影から人型のヘドロのようなものが姿を現し


ギギョギョギョギュァォァアア!!


と不快な叫び声をあげると施設をまるごと飲み込む魔法陣が現れる。


「フハハハハ!お前は強い!驚くほど強い!故に逃げさせてもらおう!この町で散々貯めた悪意のエネルギーをフルに使えば相殺もできんだろう!いくら強かろうがお前は結局何もできなかったんだよ!フハハハハハ!」


転移されてアウェーになれば負けるとわかってか矜持は魔法陣の範囲から抜けてなお男を睨み続ける。


「絶対…絶対にその子たちを助け出してみせるからな」


後ろにいる俺までが恐怖するほどの怒りが篭った声で矜持がそう言うと共に男たちは転移した。

急展開の後に残ったのは…傷ついた矜持と…それに少し恐怖する俺だった。




「さ、今度こそしっかり治療するわよ」


先ほどたぶん死なない程度にまで回復してくれたクオリアが呆れたように言うがほんの少しだけ怒っている。


「怒ってる?」


「ええ、もちろんよ。でもあんたならあそこで行くってわかってたから」


そう言いながらも治療と共に痛みを和らげる魔法も併用してくれる優しさを感じる。


「ごめん…」


「謝まらなくていいわよ、私が好きになったのはそういう馬鹿よ、昔から変わらないわ」


そう、昔から変わっていない、また助けられなかった…


「また助けられなかった…とか考えてるでしょ、さっき自分で言ったんだから次助けなさい」


「ああ、ありがとう」


俺の事をよくわかっていてくれて支えてくれるクオリアに感謝しながら血を流し過ぎたためさすがに辛い体を任せてしまう。


「あー、二人の空間作ってるところ悪いんだけど…矜持、ちょっと話いいか?」


レントが頬をかき気まずそうに話しかけてくる。


「なんだ?」


「ぶっちゃけさっきのお前…怖かったんだよ、だからさ、話してくれないか?なんであんなに怒ってたのか。

俺は今お前が怖い、だから理解して怖さを無くして…こらからも友達で居たい」


まっすぐな瞳で見つめてくるその瞳は綺麗で…だから思わずこう答えた。


「断る!」


「は?」


「冗談だ、ちゃんと話すよ。いいマヌケ面だったぞ」


笑いが止まらなくなって来て傷口が開くと怒られたがクオリアに悠里さんも笑っていて空気は弛緩してくれて良かったと思う。


話をする上でレントにだけフライングで教えてしまう事になるが話してしまった。俺の本来の階級を…翼階級ならみんな持っている精神的な芯、それが強すぎるが故の歪み。


俺はそれが人助けにある事を、精霊に憑かれたとこから師匠に育てられたとこまで軽く話し環境に恵まれただけの俺だからこそ、悪魔と違って人ならば悪にも善にもなれると知っている俺は悪人でさえも生きて欲しいと願っている事。

そしてさっきあれほど怒っていたのはあの子が精霊の力を宿していて余計に自分に重ねたんだと、もし悪人に育てられていたら悪人になっていただろう俺だからあの子を救いたかったんだと全てを話した。


「うん…わかったはわかったけど…死にかけてまで他人助けようとするとかやっぱお前頭おかしいな、話の感じ的にあの子達を殺す選択したら怪我もしないし簡単だったのに逃しちまってるんだしお前にその覚悟がないわけでもなかっだろ俺と違って…それでさらに被害出たらどうすんだよ」


「グ…痛いとこ突くな…その通りなんだけどそれでも、あの子たちも俺からしたら被害者なんだよ。潜伏を続けるなら人を殺したりもしないはずだ、だから俺にあの子達は殺せなかった」


話を聞いていた悠里さんも得心がいったと頷いている。


「たしかにそういう見方もできますね、そうなるとあの子たちは公務執行妨害が適用されるされないの瀬戸際程度の罪ですし力を持っているだけで殺すというのは比連職員として問題です」


「そこよね…矜持に気づかれず接近したから仙術を使えるのは確定でハルディスさん曰く精霊と融合してるんだっけ?凄く厄介ね…主に上への報告が…」


既に治療を終えているためクオリアが頭を抱える。


「俺も矜持がものすごい上司でちょっと頭痛いです…」


幸福の徒…邪宗教の類はすべからく面倒だが早くもクオリアとレントの頭を悩ますという結果を出していた。



主人公の助けたいという考えの異常性を書きたかったのでここまでがとてつもなくながいキャラ紹介みたいなものです。前書きにも書いた通り少しほのぼの増やしたいと思ってます。

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