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突入3



怒りのみでレントは剣を振るう、魔法を斬るなんて芸当はできないレントが幸福の徒の集団までたどり着けたのはクオリアと悠里が迫る魔法を撃ち抜いてくれたからだ。

足下が沼に変えられれば即座に凍らしてもらい真っ直ぐに…ただ真っ直ぐに進んだ、そして真っ直ぐ突っ切り怒りのままに幸福の徒の1人に斬りかかる…だがその剣が男の命を刈り取ろうとした瞬間、人を殺す事への恐怖がレントの動きを止めてしまう。

そんな至近距離になれば援護をしている側も対処しきるのは難しくなる、氷の槍がレントを串刺しにしようと姿を現した。


後悔がレントの胸を襲う、たくさん援護してもらって近づかせてもらったのに…ヒナを殺そうとした奴らだというのに…自分は肝心なところで臆病になって死ぬのかと、まだ何も成し遂げていないのに終わることが悔しい、皆んなの思いを無駄にすることが悔しい、もっと生きたいと…もっと生きて何かを成し遂げ無ければ死んでも死に切れないと…


故にヒーローは心優しくか弱い少年を守るために彼に降りかかる魔法をその式ごと殴り消しとばした。


「レント、この仕事を続けてれば人を殺す機会がある。だからお前がこいつらを殺すんなら止めるつもりは無かったんだけどさ、友達として言うなら…怒りに任せて簡単に人を殺すようなやつじゃなくてよかったと思うよ」


真っ赤なマントは誰が見てもわかるほどにヒーロー然としていて、その声は安らぎをくれる。

守られるものにとって「もう大丈夫」の証、間違いなくヒーローがそこにいた。



「うおぉぁああああ!!!」


レントが幸福の徒の黒づくめ集団に突撃して行くのを見てすぐに矜持は悠里とクオリアに頼み込む。


「2人とも、少しレントに任せてやってくれないか?できれば奴等も殺さないカタチでサポートに回って欲しい」


「私もそう思っていましたので心配なく、わざわざ矜持君の力を見せてしまうのをわかってて連れて来たのですからそれに見合う成長を彼にして貰うべきです、それから貴方の考え方もクオリアから聞いています」


背負っていた銃を膝立ちで構えてスコープを覗き弾を撃ちながら悠里は賛同し


「もちろんよ、お安い御用ね」


クオリアも二丁拳銃で銃弾を撃ち…外した分はレントにバレないように魔法で打ち消して真っ直ぐ進ませる。


「俺が言うのも何だけどさ…この仕事してれば殺さなければ殺されるって時はあると思うんだ、それを知って欲しい。そのまま殺してしまうにせよ、止まってしまうにせよ…どこまでも人の命が関わる仕事だとわかって…いざという時その重さに耐えれるように…重さに負けて動けずに死ぬことが無いように俺たちがいて安全なうちに経験して欲しいんだ…」


矜持が言い訳のように言葉を紡ぐ、いや言い訳なのかもしれない、本当はこんな経験をさせたく無いのが本心だ、しかしこれを乗り越えられるかどうかで死亡率が大きく変わるのも事実である、だから


「大丈夫よ矜持、わかってるから」


クオリアはその選択を、矜持を肯定する。

そしてついにレントが接敵を終え斬りかかり…腕を止めた。


腕を止めたレントに斬られかけた男は殺す気で氷魔法を放つ…しかしそれが届く事は万に一つもあり得ない。レントの成長のための経験という目的を達したのだから…矜持も動くからだ。


制服を第3段階で展開してレントと魔法の間に割って入り氷を殴りつけ消しとばす、そしておそらく自分を責めているであろうレントに本心を伝える。


「レント、この仕事を続けてれば人を殺す機会がある。だからお前がこいつらを殺すんなら止めるつもりは無かったんだけどさ、友達として言うなら…怒りに任せて簡単に人を殺すようなやつじゃなくてよかったと思うよ」


「矜持…でも俺は何もできてないじゃねーかよ!ここに来る前もミスをして、ここに来てからもお前の後ろについてるだけで、こいつらの所まで突っ込むのでさえ援護してもらって…挙句に何もできてない!」


悔しくて仕方がないだろう、同じ立場なら自分でもそうだ、それでも


「それでも俺は簡単に人を殺さない選択をしたお前を友達として誇りに思う!」


レントの方へ向き直っているため背後からいくつも魔法が迫ってくるがクオリアが壊してくれている、轟音の中2人は向き合う。


「そうだとしても…ヒナのために何もできてないんだよ…あいつが幸福の徒の一人だとわかった今でも…俺にはあの不安な顔が…嘘だとは思えない!苦しんでいたのが嘘だと思えない!そうだろ!あんな姿にされるほどの目に遭わせられるような奴らの中に居たんだ!苦しいに決まってるんだ!だから…俺は!」


「それでも殺さなかったんだよな」


「っ…」


悔しげにレントは口を(つぐ)


「俺はそれでいいと思う、いつか殺さないといけないにしてもそうやって相手の命も大切にできる奴が好きだ、だから今は少し俺に任せといてくれ」


矜持の纏う安心感と優しい言葉に甘えてすべてを任せてしまいたくなる、それでもレントには譲れないものがあった。


「だめだ、ヒナをあんな目に遭わせたやつは…俺がぶっ飛ばしてやらないと!」


「ああ、だからお前のその怒りは貸してもらう」


レントから放たれていた凄まじい怒気は負のエネルギーとして辺りに漂っている、それを集めて刀を作る。

これをレントに渡すことができればよかったのだが…仙術でできたこれは矜持の手から離れたら時間が経つと消えてしまう。


「これはお前の怒りを集めたんだ、お前の思いでできたこれでちょっとあいつら黙らせてくる」


思いで刀ができるなど聞いたこともなかったが矜持が嘘をつくとはレントには思えなかった。

本当は今の自分にはこの場でできることなんてほとんどないと気付いていたレントは矜持の提案を断る理由がもうなかった。


「頼む…」


そこに悔しさを感じながらも矜持に後を託す。


「おう、任せろ!」


改めて幸福の徒に向き直った矜持は胸のあたりからハルディスの権能の夢の力を出し刀に纏う、これで斬った相手は眠るため死なない、その上でレントの怒りにより激しい痛みを伴う悪夢を見るはずだ。


「怒っているのはお前だけじゃ無かったんだからなぁ!」


仙術を扱う矜持が優しいからこそ周りの人は安心を得られた、ならば今敵対し激昂させた幸福の徒が矜持から与えられるのは…恐怖だった。



魔法を防いでくれてたクオリアは絶対話が長いって思ってるはず

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