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突入



俺は自分が特別だと思っている、全ての人が同じではないのだから全員が特別だとかそういう事ではなく自身の持つ性質についてだ。


師匠に教えて貰った仙術の習得はハルディスのおかげでかなり早まったしクオリアという歳の近く強い人がいてくれたおかげで人格的にあまりスレていない様にも思う。


俺は周りの人に恵まれてこれまで生きてきたしこれからもそうであるように感じるし、そうして得た力は周りに返して行きたいと思っている…だが世の中には俺と違った特別な巡り合わせを持つ人がいると知っている。


俺は人に恵まれる巡り合わせのおかげで努力が実る環境を与えられ努力して力を得た、同じように何もしなくても力を得る巡り合わせの人もいるし人の縁に恵まれない人もいる、そしてレントはきっと事件に自ずと向かう性質でも持っているんだと思う。


地道に調査などを重ねて俺たちが犯人の居場所を突き止めたというのにレントは最初から犯人に接触していたし俺たちが終わらせる前に深く関わった、その性質を不幸と言う人も居るだろうが俺にとっては羨ましくて仕方がない。


だってそれは…俺が目指したヒーローの様な性質ではないか…


「来てくれましたか二人共、状況ですが私も情報が少なく先ほどの通りです。

今夜犯人の居場所がわかる前提でいたためレント君が例の少女に今の状況を終わらせると手帳を見せて宣言したところ少女は失敗したというような表情で逃走、その際私たちを睨みつけた上でレント君を突き飛ばしていたのでほぼ確実に黒です」


悠里さんが説明を終える、相手がおそらく精霊魔法使いだと知っている俺たちからすればその少女を追いかけたレントを追いかけなければいけない状況だ。


「それでレントはどちらへ?相手は強大な可能性が高くレントが危険です」


「マーキングしてあるので大丈夫です、彼の周囲は見えていますが問題ありません。

先程少女が地下へ逃げ込んだのですが入り口の作りが見事だった為警戒しているようです」


悠里の先天魔法の能力によりマーキングされたレントの周囲は現在悠里の目で視認できているため安全だと告げる、だが状況的に合流しなければまずいのには変わらない。


「合流後に全員ですぐに突入、ヤケになって暴走する前に制圧するわよ」


「「了解!」」


クオリアの指示に従い悠里の先導の下レントとの合流に一同は走る、転移して来た位置が寮であったためすれ違う生徒も何人かいたが悠里の背負う竹刀袋への違和感やここに矜持がいる事への違和感もあったが鬼気迫る雰囲気に押され誰一人関与する事は出来なかった。




俺は自分が情けなくて仕方がない、矜持や同性の悠里さんやクオリアさんなら彼女の異常性に気づけたんじゃないか、そんな考えが消えない。

悠里さんに注意されたところだったのに、1人に入れ込んで周りが見えなくなる状況はまずいから気をつけろと…

それでもヒナちゃんを妹に重ねてしまったからとことん付き合うと言った俺に対して悠里さんは「自分には家族が居ないからわからないが家族がいる人はやはり誰かに優しいのですね、仕事を疎かにしないのであれば口出ししません」

なんて自虐的に笑いながらも俺に歩み寄ってくれたのに、その時は悠里さんの事も優しい姉の様に思ってるだなんて言いながら言いつけを守らなかった結果がこれだ。


肩入れした相手が実は犯人で逃げられました?最悪じゃないか、原因は俺が正体を自分から明かしたから?クズじゃないか


その上捕まえることもできずに拠点らしき場所に逃げ込まれてしまった自分の情けなさに嫌気がさす。

気難しい妹に的確なアドバイスとその研鑽を見せて簡単に仲良くなった矜持、ヒナちゃんと同性で冷静な悠里さんやクオリアさんならこんなヘマはしなかったはずだ。


彼らならどんなに情を移しても最後の一線、彼女が犯人である可能性を考慮していたはずだ、そうでなかったとしてもそれ以前に気づけていたんじゃないだろうか…気づけば握った拳の中で爪が掌に刺さり血が出ていた。


「これから突入なのに自分で傷つけてどうするんですか、悔しいのなら結果を出して挽回しなさいレント君」


耳に最近では聞き慣れた厳しいながらもその中に優しさを感じる凛とした声が聞こえる。


「泣いたって解決しないからとりあえず涙は零すなよ、反省会は後でみんなでやろうな」


比連校に入ってから気づけばほとんどいつも聞いていた声と安心感のある雰囲気にほんの少ししか潤んでいなかった瞳が逆に涙を零しそうになるがこいつに安心して泣くなど許されない。


「泣くかよ、悠里さんが挽回のチャンスをくれるって言ってんのによ!」


人目につかない…まあついてもこれから突入して解決するのだから構わないのだが…部室棟の空き部屋であるため制服を展開する。


「ヘアピンも取らないとまだ少し女の子風よ?男の子ならカッコよく決めないと」


クオリアさんがパチンと指を弾くとピンが外れて落ちた、この人も俺の参戦を認めてくれるらしい。


「ありがとうございます、肩を無理に細く見せる必要も無くなったのでまさしく肩の荷が下りた感じなので…必ず役に立ちます!」


安物の魔道具だが俺なりに魔力を魔道具の限界まで込めて丈夫な剣を作って宣言する、一度約束を破った俺にチャンスをくれた悠里さんを、そして仕事の本文を忘れたにもかかわらずまだ仲間と認めてくれる2人を今度こそ裏切らないと剣に誓う、石動(いするぎ)流の誓いの立て方だ。


「期待してますよ」


「わかった」


「サポートしてあげる」


三者三様の答えが返ってくる、それを聞いて俺は明らかに異常な…ロッカーの中から地下へ続く階段へ足を踏み入れ…れなかった。


「罠とかあるだろうし先頭は俺な」


矜持を先頭に進むことになった…出鼻をくじかれたようで恥ずかしさで死にたくなった。



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