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あさまさま

ブクマとか感想気が向けばお願いします。



解析結果が出るまでの間にも調査をサボっていいわけではない、ヒカルが枝階級である以上そこに関して矜持とクオリアもでしゃばったところでどうにかなるものでもないため完全に任せきり今までと同じように潜入調査を行う。


それはレントや悠里も変わらない、レントによってもたらされた情報を知っている事すら隠してさらに調査を進めるが何も掴めない、ネットが関係しているのならリアルで探すことは極めて困難であるため仕方がない。

その中で各々が自分の立場でなせる事をしっかりとこなしていた。

矜持は教師同士の関係をしっかり探り…やはり学院の状態に心を痛めている数人へのフォローもしっかりと行っていた、嫌われないようにという遠慮が入ったため授業態度は全体的に前より良くなったがやはり生徒との心の距離が広くなったことを悲しんでいる教師もいた、クオリアと悠里もそれぞれ自分のポジションを確立して行く中でできるだけみんなを安心させる…危害を加えないと示しながらの行動を意識していた。


そしてレントは例の新聞部の後輩と仲を深めながら活動している、解析に回してから2日目、今日の夜には全て終えると聞いているがある程度はシステムについて知らされている、名前と何をして欲しいかを書き込む。とりあえず書き込みページについてはそれだけだ。あとはそれに付随する魔法陣の効果とレントの指摘した違和感、それからサイトの管理者の特定が今日明かされる。


なぜこの学院の生徒たちはここまで過剰に「あさまさま」を恐れているのか、実例が何もあがっていなければ恐怖は抱きにくい。


つまり…よく調べるべきは多くの生徒が体験した…らしい小さないたずらの数々。


事件というには取るに足らないような物も多かったがそれを事件としてわざわざ報告しようとした生徒の心理から見た場合浮かび上がってきたのは


『その人にとってのみ』効果的である事だったのだ、親友と買ったお揃いのキーホルダーの紛失や試合前の景気付けに代々使われてきたソフトボール部備品オンボロのバット、その他よくありそうだが当人にとってはなによりも大事な思い出を狙った犯行の数々…あさまさま』に名前を書かれれば被害を受けるのを裏付けるように近しい人しか知らないところを狙われる恐怖。


この前まで仲良く話していた相手がその情報を元に急に自分に危害を加えるかもしれない、そんな恐怖の上に成り立っているし…それに恐怖するという事はみんな誰かの名前を書き込み、どんな嫌がらせをして欲しいかまで書き込んだのだ…。


自分が行ったからこそ誰も信じられない自業自得、小さな悪意を大きな恐怖に変える悪辣なサイト、その目的から仕組みまで徹底的に暴くと4人は強い憤りを胸に秘めていた。


ヒカルからの連絡を待つ間、矜持とクオリアは2人で話している、銀翼として改めて気になったことがあったから。


「こんなに悪意を撒き散らすような事が行われてるのに学院内の空気が普通すぎる、悪意のエネルギーが満ちていない事が異常なんだよ」


「異常がない事が異常ね…てことは敵も仙術使ってるのよね、精霊魔法使いが噛んでるってこと?」


「恐らくそうです、それも俺の探知に引っかからない程度には巧いやつがいます」


仙術とは元は精霊の術とは言え矜持のそれは既に並みの精霊など軽く超越している、しかし探知においてはまだまだな部分も多い上に相手がそれなりの使い手であれば簡単に隠せるのだ、不自然でないように弄るなど容易(たやす)く、それを見分けるのは困難だ。


仙術が使える者同士だと隠れる方が圧倒的に有利であるためおそらく精霊が相手という事以外何もわからない。


「精霊かぁ…権能で多少なら魔力も使わずに魔法使ってくるから持久戦から大火力の連発まであるし契約してる相手によっては厄介ね」


「せめて契約者の方の魔法が初見殺しの厄介な能力じゃなかったらいいんだけど…」


ヒカルからの報告次第で今日か明日には黒幕に挑む事になる、逃げていれば面倒だし逃げていなければいないでここは相手のホーム、厳しい局面が予測される。


「悠里ちゃんはもう知ってるからいいとしてレントくんね、万が一の時矜持が銀翼ってバラせる?」


「正直かなりバレている部分はあるから大丈夫っちゃ大丈夫なんだけど…銀翼ってなると萎縮されて友達として対等でいれないかもしれないと思うとまだ少し早いかなって…でもまあそんな事は命を救うためなら大した事じゃない」


できる限り自分の意思は通すがどうしようもなければ我慢する、それこそが組織の一員としての在り方、だが矜持はそういうつもりで言っているのではない。


「そうね、何よりも命を優先するのが矜持の目指すヒーローよね」


翼階級が持つ常軌を逸した狂気とも言える精神的な芯、矜持の場合はそれが命を助けること、その先にあるみんなが笑えるハッピーエンドを目指す事だ。


「クオリアだって同じなのになんで俺だけみたいに…」


そこへ着信がくる、ヒカルからだ。

内心クオリアは助かっていた、クオリアはたしかに矜持と同じようにできるだけ多くの命を助けようとするし矜持の手助けもする。

だがその根底にあるのは矜持の様な多くの人へ向けた優しさではなく大切な人に幸せになって欲しいだけなのだ、つまり矜持がいなければ今より切り捨てる範囲は広がったはずだ。その事について触れないで済んで良かったと安堵する。


すぐに気を引き締めヒカルの解析結果を真剣に聞く態勢を取る、そしてヒカルから『あさまさま』についての話が始まった。

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