怒りの理由
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先ほどまでずっとピリピリとした雰囲気を発していたことを反省してか少ししょんぼりとしながらレントは昼の出来事を話し始める。
「今日は部活棟の方へ顔をだしてたんすよ、新聞部とかだと記事にはならなくても話題に出てきた話とか聞けるかなって、転校生だから学校のことが知りたいとか言って議事録とかメモとかも親切な人に見せて貰えたっす」
「それで何か怒るような事があったんですね?」
「いえ、どちらかと言うと逆だったんすよ、話題に上がってるのとかが最近のになるといい話とかただの出来事だけで平和だな…って、ただ」
そこでレントが眉をひそめる
「それが変だったんすよ、過去の記事には先生がこんなやらかした事があったとかこの生徒がこんな失敗をしたなんてくだらないどうでもいいだろってネタがあって実際に記事になってたんす。
改めて図書室で調べて読んでみたら俺としてはそっちの方が馴染みのある学校新聞て感じで…楽しかったんすよ」
「それは…クオリアの言っていた距離があるに繋がるのですね?」
悠里もレントが怒ってる意味がだいぶ理解できてきた、だがそれだけであのサイトまで辿り着いた説明はされていないのだから続きがあるはずだ、レントが怒っているその核の部分が
「俺が何か調べてるのに気づいた新聞部の子が後をつけてたみたで…なにかを調べてる人の雰囲気が出てたって言われたっす、その子が俺が昔の記事を読んで笑ってるのを見て「やっぱり昔の方が面白いですよね、私もそっちの方が好きです」って話しかけてきてくれたんすよ」
レントの拳に力が入る、悔しさが溢れでておりその姿に悠里は頷くことで続きを促す
「その子が泣いてたんすよ
「先輩は転校生だから分かりづらいかもしれないですけどこの学校前はもっとみんなが仲良くて居心地がよかったんですよ、良くも悪くもみんな遠慮がなくて暖かくて私はそんな学院が好きだったんですけど『あさまさま』のせいでみんなが他人を怖がり始めたんです」
って、必死に途切れ途切れに語ってくれたんすよ…『あさまさま』ってのが恨みを込めて他人の名前を書くってサイトらしくて、書き込まれたら何か報復があるって…ただの噂話に踊らされてみんな萎縮して学院が楽しくないって、その子は転校生で何も知らない俺が来るまでその気持ちを1人で抱えてたんすよ…」
悠里としてはその話も矜持とクオリアの前でするべきだったのではないかと思うがレントとしては魔法陣の方に秘密があると踏んだのだろう。
実際悠里も魔法陣のカモフラージュに使われた書き込みはただの機能ではないかと考えている、それに何よりレントはその話を思い返してまた義憤に駆られ怒りを噴き出している、今度は恐れない、同意する。
「俺に対しての言葉遣いからも分かる通りその子は2年で…あの子は、あの子以外の人たちも…みんな常に周りに怯えて機嫌を損ねないように生活してるんすよ、俺たちに対して普通だったのは転校生だから何も知らないうちに仲良くなろうって感じだったと思うっす」
言葉を切り、握った拳は手のひらに強く爪が食い込み歯を食いしばり必至に怒りを抑える、話を続けようと絞り出す声は炎のように熱を含む
「それが許せない…クソみたいなサイトのせいで人を信じれないなんて、あっていいはずがない!」
レントがここまで怒りを覚えるのは少し前までの妹にこの学院の生徒を、特に新聞部の子に重ねているからだ。
師匠はレントもまた門下生であり難関である比連校に入ったことを心の底から喜んでいた、両親もそうだ。
本当に強くなりたいと願った人は他の道場に移ることを勧められていたため小さな子どもが多い道場、中学生くらいになると趣味だとか友達がいるからなどの理由で続けているひとくらいしか残っていないあの道場ではほとんどみんなが結果を出したレントを祝福した。
ただエレナだけは師匠の型をしっかり学んでいないレントが結果を出す事は師匠への裏切りだと、それは師匠の型を否定しているのだと躍起になってレントを超えるためにひたすらに型を極めようと他人と関わる時間を減らしてひたすら修行していた。
その姿はレントからは見ていられないほど辛そうだった、だから矜持の足捌きが異常なほど洗練されているのを見た時はこいつしかいないと頼んだのだ。
型をしっかりと習得して結果を出していて、両親や師匠と違ってレントとエレナを平等に扱わない。「お兄ちゃん」と呼ばれたらエレナの事を優先して可愛がってくれるクソ野郎。
そんな心の拠り所がないこの学院の生徒はみんな少し前の少し間違えば壊れてしまいそうなエレナと同じ状況にいるのだと、いや、何をすれば解決するのかもわかっていない以上それよりも辛いの状況に無理矢理されていると思うと怒りが収まらない。
「落ち着来なさいレント君、その怒りは犯人を捕らえる時までとっておいて今は冷静に…できることを全てやって必ずサイトを閉鎖して…こんな学院をこんな状況にした犯人を捕まえましょう」
「…っはい…」
静かだが悠里の目にも確かな熱さを感じたレントは力強く頷く。