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それぞれの朝



交代で学院の見張りを続け終えた翌朝、ホテルのテレビでヒーロー番組を見ていた。


「矜持、年齢どうこう以前にストーリーとかわからないんじゃ無いの?」


「うん、俺でも楽しめそうなライダーの方とか特に話についていけないけどさ、ヒーローものってやっぱりこう…ロマンがあるというか胸が熱くなるものがあるんだよ」


困っている人のところへ駆けつけて悪者を派手な必殺技で倒して一件落着、そんな単純明快さとたまにとてつもなくかっこいいセリフが出てくるのを楽しみにしているためストーリーは対して気にしていない。


「まあそうよね、そういうの好きなおかげで矜持はヒーローしてる訳だし」


ベッドの上であぐらをかいてテレビを見ている矜持に後ろから手を回しもたれかかりながらクオリアが呟く、当然ながら豊満な胸が当たり矜持も動揺する。


「く…クオリア、こう…あれがあれだからもうちょいあれしてくれると助かるんだけど…」


「あれしか言ってないからわかりませーん」


「胸が当たっててテレビに集中できません…」


「正直に答えてくれてありがとう、でも離さないわよ?このまま昼くらいまでは私が矜持独占するんだから」


確かに今の番組が終わってしまえば特にやることはないし昼あたりで人が増えるまでは町に出る意味も薄い、となれば何をしてもいいだろう。

さらに言えばこんな態度を取るという事はクオリアは疲れている。


「じゃあ少しだけ寝る?テレビにそこまで拘りないし交代で見張りしてたからそんなに寝ても無いんだし」


「それを待ってました〜」


甘えるようにクオリアが矜持を押し倒しその胸に顔を埋めてしまう、というか甘えている。


「しんどいなら頼れるお姉さんみたいな態度やめたらいいのに」


「そうなんだけどね、別に作ってるわけじゃなくて普段の私も今の私もどっちも本当の私だってわかってるでしょ?それに矜持にはこうやって甘えれるから大丈夫よ」


「うん、俺も歳下と一緒にいると自然とお兄さんて感じの態度とるしわかるけど…まあ俺もクオリアやハルディスに頼れてるだけだから変わらないか」


本当に自分を作ってるわけでもなくどちらも自然と出てしまう本性なのだから仕方がない。その上でお互い支えになれているのだから万々歳だ。


「ハルディスさん頼りになるもんね、気が向いたらまた闇魔法教えて欲しいなー」


「ハルディスもクオリアのこと好きらしいし大丈夫だと思う、今はゲームに熱中してるからまた今度だって」


「そっか、えへへひぇ〜、あー矜持に抱きしめられながら寝るの本当中毒になるくらい気持ちいい…不安が全部無くなってく…」


「ほんのちょっとだけ安定の魔法も使ってるから、俺も眠くなって来たから寝るよ、おやすみ」


「ほやふむみゅ」


「何言ってるかわからないって」


矜持の胸の中で眠るクオリアが最後にいったおそらくおやすみであろう言葉は全く意味の無い言葉になっていた。

夜の間は眠っていてもいつ起きなければいけないかわからない浅い眠りしかゆるされなかったのだから、ほんの2.3時間くらいでも熟睡できる状況に2人は身を任せた。



一方でレントと悠里の方は寮のため朝から規則正しい生活が求められる、朝食の時間は限られているししっかりと寮で眠っていたか確認の点呼と布団をしっかり畳んであるかの点検…そしてそこからは寮内の観察のため動き回る、そのため夜はしっかりと寝ていたため朝からしっかりと目を覚ましているはずなのだが


「あとでクオリアたちの意見も聞いて場合によっては逮捕しますから…!」


涙目でプルプルと震えながら悠里がレントを睨みつける、服はネルパ女学院のものをしっかりときているが髪の方は濡れている。


「いや…ほんと寝ぼけてて、水の音するから洗面所だと思って…すいませんでしたぁ!」


対するレントは全力土下座、体の形がわかりにくいスウェット姿を着ているため余計に駄目男感が出ている。


事の次第としては悠里が朝早くに起きて部屋に付いているシャワーを浴びていたところへレントがとなりの洗面所と間違えて扉を開けてしまったという、言ってしまえば大胆な覗きだ。


「シャワーの音と洗面所の音はぜんぜん違います、言い訳は後ほどお聴きします」


悠里の言葉の方が圧倒的に正しいし恩を仇で返す形になっているレントはどんどん萎縮していく。ただ悠里はやはり言葉は冷ためで事務的であろうとしているが中身は優しい、今だってクオリアと矜持という第三者の意見を聞いて判断すると自分の意見をごり押しはしていない。

ただこれは完全に有罪だろう、比連職員なら現行犯で捕らえられるレベルの悪事だ。


「いやもうほんと比連に所属する者として面目次第もございません、ただ本当に悪気は無かったんです…どうか…どうか…」


床に(ひたい)を強く押し当て謝罪するレントの姿に誠意を感じ悠里も少しずつ本当に落ち着いてくる。


「そこまで反省しているのなら今回は見逃します…レント君が寝ているから安心だとシャワーを浴びた私にも罪は無くても原因はあります。しっかりと起きてから扉を開けないよう注意してから行くべきでした。普通なら注意なんてしなくてもいいような事ですが」


「はい…すいませんでした…」


棘のある言い方ではあるが本当に許してしまうあたり優しさに溢れている、レントは改めて今回の仕事が終わったらお詫びも込めてお礼をすると心に決めた。



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